海洋開発推進委員会(委員長 大庭 浩氏)/10月6日
膨大な天然資源と広大な空間を有する海洋の開発利用は、資源・空間・環境等のいずれの面からも重要な課題であり、厳しい財政状況においても、引き続き、わが国として海洋開発に関わる大型プロジェクト等を総合的・効率的に推進する必要がある。そこで、当委員会では、科学技術庁の中澤審議官、村上海洋地球課長ならびに海洋科学技術センターの堀田理事を招き、来年度の海洋開発関係の概算要求と重要施策等について説明を聞いた。以下は、その概要である。また、当日は、来年度予算編成に対し、海洋開発プロジェクトの実現に向け、委員会としての要望書を取りまとめた(要望書は5頁参照)。
厳しい財政状況において、来年度の海洋開発関係概算要求は、約680億円である。しかし、来年度予算については、一般枠とは別枠で新たに「情報通信・科学技術・環境等21世紀発展基盤整備特別枠」が設けられており、こちらで要求している約79億円と合計すると約759億円となる。
近年の科学技術庁の海洋開発関係予算は、海洋開発利用に直結するテーマから、海洋に関する知見を深めることを主眼としたテーマや、新規性および将来に向けての重要性が高い研究を重視したテーマに比重を移しつつある。例えば、来年度に関しては、地球深部探査船の建造、地球観測フロンティア研究システム、成層圏プラットフォームの研究開発に対する概算要求に、その傾向が表われている。
深海底掘削の問題は、今日、世界の海洋科学技術研究者が共有する懸案となっている。これまで国際的には、米国のジョイデス・レゾリューション号1隻のみを運用して、国際深海掘削計画(ODP)が推進されてきた。しかし、2003年開始予定の統合国際深海掘削計画(IODP)に向け、日本の地球深部探査船を加えた2船体制の実現に世界の海洋研究者から大きな期待が寄せられており、わが国としても早急に地球深部探査船の建造に着手する必要がある。
また、地球変動予測研究の中核を成す地球シミュレーターは、スーパー・コンピューターを並列した超高速計算機システムであり、地球規模の気候変動の解明、長期にわたる地球の変動メカニズムの三次元的な解明およびその予測等に資するものである。今後、わが国として、海洋を通じた地球観測の充実、地球変動メカニズムの理論的研究、そしてシミュレーションという三位一体の研究体制を確立するためにも、地球シミュレーターの開発をさらに推進していくことが望まれる。
同センターは、
今年は国際海洋年であるとともに、ポルトガルのバスコ・ダ・ガマによるインド到達500周年にあたる。それにちなんで、リスボンで5月から9月末まで132日間にわたり、「海洋、未来への遺産」と題する国際博覧会が開催された。海を通じての西欧社会との結びつき等をテーマとして出展した日本館にも、延べ170万人が来館し、わが国海洋文化に対する国際的な関心の高さが窺われた。
7月に「海洋・極地工学に関する国際会議」がリスボンで開催され、世界各国から約400名の海洋関係者が出席した。私は海洋科学技術センター会長として講演し、わが国における最先端の海洋科学技術の現状を紹介するとともに、海洋科学技術センターが今後とも、国際的な「共生」と「共働」の精神に則った活動を志向していく方針であることを明らかにした。
地球深部探査船の概要 |