経団連くりっぷ No.88 (1998年10月22日)

アジア・大洋州地域委員会(委員長 熊谷直彦氏)/9月25日

今年のAPECマレーシア会議の主要議題について


APEC高級事務レベル会合が、9月13日から15日までマレーシアで開催された。本会議に参加した通産省通商政策局経済協力部の伊沢地域協力課長から、今年のAPECの主要議題について聞いた。


現在、APECメンバー間に短期的なAPECの活動方針をめぐっての対立がある。一方は、米国、ニュージーランド等、貿易の自由化を重視するグループである。これら諸国はAPECをWTOの前段階と位置づける傾向にある。他方、中国をはじめとするアジア諸国は、経済技術協力を重視しており、これまで自由化がハイライトされてきたことに不満を感じている。このような構造の中、今年のAPECでは主に以下の4つのテーマが主要議題になると考えられる。

  1. アジア経済危機への対応
  2. 各国首脳が喫緊の課題であるこの問題に正面から取り組み、アジア太平洋地域の経済ならびに世界経済の回復に向けて力強いメッセージを出すことが期待されている。金融については、11月のマニラ・フレームワーク会合等の検討結果を踏まえて議論が行なわれる。アジア各国は、貿易産業金融、中小企業金融に強い関心を有している。

  3. 早期自主的分野別自由化(EVSL)
  4. 日本は、優先9分野(林産物、水産物、環境、エネルギー、玩具、宝石・宝飾品、医療機器、化学、テレコミ相互認証)の自由化について、関税措置が困難な林産物、水産物を念頭におき、自主性の原則に基づき参加することを主張してきた。それに対し米国等は、すべての分野の自由化を求めている。今後は、11月のマレーシア会議に向けて引続き関係国と調整(林産物、水産物等)を行なっていく。

  5. 経済技術協力(エコテク)
  6. 議長国マレーシアは今年の主要な成果として技能開発行動計画の策定に力を入れている。具体的には、官民パートナーシップにより技能形成を推進するための技能開発行動計画を取りまとめる予定である。なお、経済技術協力については、あくまで商業ベースであることを主張する米国と、政府主導による技術移転等を唱える中国との間で理念的な対立がある。

  7. 電子商取引
  8. 電子商取引に関する原則(民間主導の原則等)の作成と2000年問題への対応における域内協力について取りまとめる予定である。特に2000年問題については、緊急を要する課題として、首脳会合でも取り上げるべきという強い要望がある。


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