第22回日本メキシコ経済協議会第1回代表団打合せ会(団長 川本信彦氏)/10月1日
11月中旬に東京で開催予定の第22回日本メキシコ経済協議会に向けた、第1回代表団打合せ会を開催した。当日は打合せに先立ち、田中駐メキシコ大使ならびに恒川東京大学教養学部教授より、最近のメキシコの政治情勢および経済情勢につき説明を聴取した。田中大使は政治情勢を理解するためのキーワードとして複数政党化、貧富の差を取り上げ、恒川教授は経済が直面する主な問題として国内景気と貿易収支赤字との関係および不良債権問題を挙げた。
与党制度的革命党(PRI)内部の制度的疲労、82年および94年の経済危機で打撃を受けた中間層の離反などから、かなり以前よりPRIの衰退が始まっていた。97年7月の中間選挙では、69年間守り続けた下院の過半数を失い、複数政党化が進展した。他方、野党の民主革命党、国民行動党等が勢力を伸ばし、それぞれ国民の約25%の支持を得ている。
自由開放経済政策の結果、マクロ経済が好転した反面、中間層が没落し、貧富の差が拡大した。その結果、94年1月にはチアパス州でサパティスタ民族解放軍が蜂起し、和平交渉が進展しないまま死傷事件が散発している。また貧困は治安の悪化を招き、一般人を対象とした強盗、誘拐が増えている。
セディージョ大統領は、PRIの衰退にもかかわらず、安定的政局運営が評価され、55〜60%の高支持率を維持している。また民主化を進めたことから海外からの信頼も高い。2000年8月に次期大統領選挙が予定されているが、現時点では見通しはまったくわからない。
82年の経済危機と異なり、94年通貨危機の後、経済は急速に回復し、97年には7%の成長率を達成した。低迷する国内市場に代わり回復の原動力となったのは輸出である。メキシコの輸出先は米国が85%以上を占め、米国経済が好調である間は強みであるが、失速すると弱みに転じるので要注意である。
好況時には貿易収支赤字が拡大するというジレンマから抜け出すために、輸出市場の多様化を図ると同時に、裾野産業を育成し製造業の付加価値を高める必要がある。
また銀行の不良債権の処理をめぐり与野党の対立が続き金融システム不安が高まっていたが、9月半ばに妥協が成立した。
日本は米国に比べ、メキシコに限らず中南米市場全体における競争力で遅れをとっている。日本からメキシコへの投資は、近年、輸送機械・部品、電気電子機械の分野で大きく伸びており、今後は電力、石油化学などの分野でも伸びる可能性がある。