経団連くりっぷ No.89 (1998年11月12日)

マクネリー サン・マイクロシステムズ社会長との懇談会/10月8日

起業家の育成と起業風土の醸成に向けて


出井新産業・新事業委員会共同委員長の司会により、サン・マイクロシステムズ社のマクネリー会長と、起業家育成のあり方などについて種々懇談した。以下は、マクネリー会長の発言骨子である。

  1. 起業家の「遺伝子」
  2. 起業家とは、リスクを恐れず、常に前向きで、自立心が強く、目前に広がった未知の世界で臆することなく冒険ができる人である。起業家は、そのような「遺伝子」を持っていて、他人とは一味違ったことに取り組む人である。シリコンバレーの起業家の半分以上が移民の第一世代と言われていることからも、起業家たらしめる要素は国籍や人種ではなく、起業家の「遺伝子」を持っているかということである。

  3. 社員の活性化とリーダーのあり方
  4. 第1は、同じ人種、タイプの人材を採用するのではなく、起業家の「遺伝子」を持った人材を発掘し、採用することが大切である。そのような人材の採用が決まった場合、当社は、相応の報酬を用意している。
    第2に、ストックオプションの活用が重要である。当社では、社員に対する報酬は、一定額を全額保証した現金ではなく、会社の価値の5%に相当する報酬の一部をストックオプションという形で社員に与えている。やる気が旺盛で成果を出した人にとっては、その価値が何倍にも膨れ上がる可能性を秘めた魅力的な仕組みである。
    第3に、リーダーは、精神的な意味において、社員の模範であることを認識することが重要である。社員はリーダーの真似をするものである。リーダーは、自らが、前向きで、改革を行なえる人物であることをアピールすることにより、社員に影響を与え、統率しなければならない。ビジネススクールで「演劇」を教える必要がある。
    第4に、リーダーは、スピンオフに対して寛容であることも大切である。スピンオフした人との情報交換を行ない友好的な関係を保ちつつ、新しい技術を開発した際には会社ごと買い取る柔軟性も必要である。

  5. ベンチャー育成に向けた日本への提案
  6. 第1は、他人とは一味違ったことに取り組む先見の明をもった人を温かく見守ることが大切である。そして、このような人に対して資金提供などの支援を行なう気運を盛り上げるべきである。
    第2に、ベンチャー企業の税率を下げるべきである。これにより、ベンチャー企業は市場競争に勝ち残る機会が与えられることになり、起業家の「遺伝子」を目覚めさせる土壌づくりにも繋がる。
    第3に、資金の流動性を高めることが大切である。日本の制度には、マーケットリスクの見方、株式におけるリスクの見方などが米国に比べて非常に保守的な面があり、改善が望まれる。


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