貿易部会(部会長 團野廣一氏)/10月27日
貿易投資委員会では、産業界の立場から中長期的な視点に立ちわが国の通商政策のあるべき姿を議論することなどを目的に「貿易部会」を新たに設置した。第1回会合では大妻女子大学の渡邊頼純教授より、EUの通商戦略とWTOへの対応等につき聞いた。
WTOは現在、
GATTは元来1930年代の世界経済のブロック化に対抗するものとして設立され、その50年の歴史は地域主義との戦いの歴史と言えよう。例えば、
過去のEU拡大に際し、アンチ・ダンピング措置の新規加入国への拡大、原産地規則の恣意的運用、域外のサービス提供者の設立権の不透明な判断等の問題がみられた。日本企業は現地対応の能力に長けており、かかる問題に直面しても何とか克服しているのが現状であろう。しかし、わが国がEUと有利に交渉を進めるためにも実務上の問題点を日頃から政府にインプットすべきである。また、国際公共財であるWTOを積極的に活用しようとの発想も必要である。
欧州委員会のブリタン副委員長は自由貿易を信奉し、WTOに関しても包括的な自由化交渉(ミレニアム・ラウンド)の実施を主張している。しかし、欧州委員会対外経済総局は必ずしも自由貿易派ばかりではない。日米両国はブリタン副委員長の活動を積極的にサポートしていく必要があろう。
本年5月の米EU首脳協議でTEP(太平洋パートナーシップ)構想が打ち出され、貿易の技術的障壁の撤廃、サービス貿易自由化など、広範な分野で米・EU間の協力関係が強化されることとなった。こうした動きはWTOの次期交渉のアジェンダ・セッティングに一定の役割を果たす。WTOのように法的拘束力を持つ交渉ではアジェンダ・セッティングが極めて重要であり、わが国もその過程に積極的に貢献していく必要がある。