経団連くりっぷ No.89 (1998年11月12日)

第22回日本メキシコ経済協議会第3回事務レベル打合せ会/10月28日

マキラドーラの変更と製造業振興プログラム


11月中旬に東京で開催予定の第22回日本メキシコ経済協議会に向けた、第3回事務レベル打合せ会を開催した。当日は打合せに先立ち、日本貿易振興会の戸塚中南米チームリーダー代理より、2000年末に予定されているメキシコのマキラドーラ制度(保税輸入した原材料等を製品に加工して輸出する場合の税制面等での優遇制度)の変更、およびその代替策としての新たな製造業振興プログラムの導入、日本メキシコ間の貿易・投資関係の現状につき説明を聴取した。

  1. マキラドーラ制度の変更
  2. メキシコに進出している日系企業は製造業が中心で、多くはマキラドーラの保税輸入制度の適用を受けている。しかし北米自由貿易協定(NAFTA)では、2001年以降、NAFTA域内への輸出に関しては保税輸入制度を廃止しなければならないこととされている。
    そこでメキシコ商工省は、NAFTA域外からの部品輸入の多いマキラドーラ企業が不利な立場に置かれることのないよう、10月初旬に次のような方針を発表した。

    1. NAFTA向け輸出に関する保税輸入制度は予定通り2000年末をもって廃止する。
    2. この代替策として製造業振興のための新たなプログラムを導入する。

  3. 製造業振興プログラム
  4. 製造業振興プログラムは、自動車、電気機器、電子機器の3分野の指定製品の製造者を対象に、指定部品・資材の輸入について5%または0%の特別減免関税を適用するものである。このプログラムは、まず「プロジェクト」として官報に公示され、一定期間を経て正式に発効する。
    現時点で同プログラムがマキラドーラの保税輸入制度の代替措置として充分かどうかは判断できないが、日系企業の部品調達の方針、関連企業の対メキシコ投資計画などの見直しを迫る要因であることは確かである。すでに日系企業にはプログラム案が配布されているが、メリットを詳細に分析し、追加すべき品目、あるいは逆に関税を引き下げるべきでない品目など、意見があればなるべく早く商工省に申し出ることが重要である。

  5. 日本の対メキシコ投資は拡大
  6. メキシコの相手国別貿易額は米国が第1位であるが、貿易赤字額では日本に対するものが最大である。これまでメキシコ政府は日本からの輸入は部品等メキシコにおける製造上必要で、むしろ輸出に貢献するものであるとして問題視していない。しかし最近の国際金融不安でメキシコ市場に対する投機筋の攻勢が懸念されるなか、政府が貿易赤字に神経をとがらせていることには留意する必要がある。
    日本からメキシコへの投資は94年度に大きく伸び、95、96年度は低迷したが、97年度は自動車関連の投資を中心に前年比3倍の伸びを示した。全体として日系企業の進出が進むなか、日本国内の情勢を反映して金融、特に銀行は駐在員事務所を減らしている。


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