経団連くりっぷ No.90 (1998年11月26日)

高村外務大臣との懇談会/11月10日

世界経済の混迷克服への貢献が日本の使命


小渕総理のロシア訪問、APEC首脳会議、クリントン米国大統領や江沢民中国国家主席の来日など11月の重要外交日程を控え、経団連では、高村外務大臣からわが国の経済外交の課題について説明を聞き、意見交換した。会合には、今井会長はじめ副会長、国際関係の委員長ほかが出席した。以下は高村外務大臣の説明要旨である。

  1. 世界経済の現状認識
  2. 昨年来のアジア経済危機は、各国の努力もあり、通貨が下落し続ける最悪の状況は脱したが、実体経済の落ち込み、食糧不足、資金不足等不安定要因も少なくない。アジアの通貨・経済危機は、ロシアや中南米に波及し、先進国の金融機関にも甚大な損害を与えている。危機に直面した諸国への支援が日本を含む、世界各国の最大の外交課題となっている。

  3. 経済・金融危機へのわが国の対応
    1. 国際金融システム改革
    2. 10月30日のG7で国際金融システムのさらなる改革の必要性の合意を見た。日本としては、危機の回避、危機に直面した国がとりうる対応、迅速かつ有効な国際支援のあり方、被支援国に課すべきコンディショナリティー等について、国毎の事情を一層反映させるなど改善の必要があると考えている。国際金融システムの改革の議論の中で、日本がかねてから重視していた「社会的弱者への配慮」という観点が強調されるようになってきたことは望ましい方向であり、今後はさらに、マクロ経済政策運営、金融技術、裾野産業の育成等、技術協力を強化していく必要がある。

    3. 貿易投資の自由化の促進
    4. 経済・金融危機への対応で保護主義の台頭を招かず、新興市場諸国の経済回復のためにも先進国が市場を提供することが重要である。日本は、貿易立国として引き続きグローバルな自由化の促進を率先して進めていく必要がある。APECでは、EVSL(早期自主的分野別自由化措置)の問題の解決を図り、WTOの下で2000年から開始される次期自由化交渉を通じて、グローバルな貿易投資の自由化を一層促進すべく、各国と協力して積極的に取り組みたい。また、日本自身の活力を引き出すためにも一層の規制緩和を進める必要がある。

    5. 日本経済の再生
    6. 各国は、日本の景気回復と金融再生および一層の規制緩和が輸入拡大と対外投融資の回復につながると期待しており、世界最大の債権国である日本は、こうした国際的な期待に応えていく責務を負っている。

  4. 経済界との協力の強化
  5. 日本政府としては、経済危機に直面している国で操業を継続している日系企業の活動を積極的に支援していきたい。国際金融システム改革やWTOの自由化交渉を進めるに当たり、経済界との対話を強化したい。


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