経団連くりっぷ No.90 (1998年11月26日)

第25回北陸地方経済懇談会/11月11日

新たな発展のための基盤の確立と地域の自立に向けて
−北陸経済界と懇談


経団連では、北陸経済連合会(北経連)との共催により、標記懇談会を富山市にて開催した。当日は、北経連から谷会長はじめ地元経済人約100名と、経団連から今井会長、那須・樋口・古川の各副会長が出席し、当面の経済対策、規制緩和の推進と新産業の創出、社会資本整備のあり方などについて、種々懇談を行なった。
また、懇談会に先立ち、家庭配置薬のトップメーカーである(株)廣貫堂を訪問し、最新の生産設備を視察した。

  1. 北経連側発言
    1. 開会挨拶
      谷 正雄 会長(北陸電力会長)
    2. 北陸経済は、現在、大変厳しい状況にあり、今後さらに悪くなる恐れがある。政府においては、公共投資の増額をはじめとする景気対策を速やかに断行し、一刻も早く景気を回復させることが求められる。
      北陸地域の社会資本整備は、太平洋側と比べると大きく遅れている。北経連としては、21世紀を見据えた産業基盤の確立のためにも、北陸新幹線の一日も早い完成、東海北陸自動車道をはじめとする高規格幹線道路の整備促進などを訴えている。これらの社会資本は地域経済を支える重要な役割を担う。北陸は、世界に通用する技術を有する企業が数多く存在し、日本海側でも有数の工業集積を有するなど、高いポテンシャルをもっている。国には、社会資本整備の遅れが地域の発展の可能性を潰すことがないようお願いしたい。また、北経連としても国ばかりに頼るのではなく、地域経済の活性化に向け、自らも努力していく所存である。

    3. 景気回復のための諸施策について
      久保田照雄 副会長(北陸銀行相談役)
    4. 北陸地域は、景気の低迷が長引き、極めて厳しい状況にある。企業の売上高は減少し、倒産件数も増加しており、景気の先行きに対する不透明感が強まっている。企業や家計は自らを守ることで精一杯な状況にあり、このような中で景気を回復させるためには、大胆な景気対策を講ずる必要がある。例えば、新都市を建設し、膨大な需要を喚起することもひとつの案であろう。
      また、住宅投資を促進させる政策も重要である。土地の取得を含めた総合的な政策が求められる。さらに、中小企業の育成に向けた政策が求められる。北陸には、小さいながらも高い技術力を有する企業が数多く存在しており、産官学が一体となって、これらの企業をサポートする体制づくりが必要である。
      いずれにしても、企業や家計の将来に対する不安感を払拭するとともに、目に見える施策を確実に実行していくことが重要であり、経団連には強いリーダーシップを発揮して、景気回復に取り組んでほしい。

    5. 社会基盤の整備促進
      宮 太郎 副会長(大和会長)
    6. 今年、北陸新幹線の長野〜上越間の新規着工が決まり、工事が進められている。しかし、財政構造改革法の集中改革期間は、事業費を抑制するとの方針により10億円しか予算がついていない。このままでは、完成までに何十年もかかることになり、生きているうちに完成を見られない。陳情で、何度頭をさげたら効果があるのか。完成時期を明確にしていただきたい。
      私は、25年間にわたり北陸新幹線建設の意義を訴え続けている。中央は「任せておけ」と言っておきながら、地方のことを何も考えていない。一体、何をまかせればいいのか。経団連においては、引き続き、ご理解と支援をお願いしたい。

    7. 環日本海経済交流の推進
      黒川誠一 常任理事(セーレン相談役)
    8. 北陸地域は、日本の中央部に位置しており、東京・大阪・名古屋の三大都市圏と近接するなど、地理的優位性を有する。また、日本海を挟んだ中国、ロシアなどの対岸諸国とは、古くから交流の歴史をもっている。
      北経連では、これらの対岸諸国との経済交流を促進するために、産官学の組織として「北陸環日本海経済交流促進協議会」を設立し、調査研究、情報収集等を行なっている。
      他方、北陸地域は、港湾などの物流基盤や総合交通ネットワーク等のハード面の整備が不十分である。今後は、環日本海経済交流圏のゲートウエイとしての機能を果たすための基盤づくりに取り組むとともに、北陸国際大学などを設立し、北東アジア地域との学術交流ならびに人材育成のための拠点づくりに取り組んでいきたい。

    9. フロア発言
    10. 自由懇談では、北経連側から、行政改革に伴う国の地方出先機関の存置の問題に関連して「地方出先機関の8ブロック化により北陸地域から国の出先機関がなくなる可能性が考えられる。国土の均衡ある発展のためには、ある程度の国の後押しが必要である。社会資本整備一つとっても、太平洋側と格差が残っている北陸の現状では、今までのように国の出先機関との連携が必要である。政府は、もう一度、地方出先機関の存置のあり方を考え直すべきである」との問題提起があった。また、「景気回復のためには、消費税の税率の引下げが不可欠」との発言があった。

  2. 経団連側発言
  3. 樋口副会長は、最近の経済戦略会議の取組みを紹介するとともに、「日本は景気の回復に向けて、アクセルを踏む時である。日本経済の再生に向けて全力で取り組む」、那須副会長は「日本経済の活性化のためには、規制の緩和を進め、新産業・新事業を創出していくことが不可欠」、古川副会長は「北陸地域の自然と生活の豊かさ、伝統工芸の集積、そこから派生した先端技術の集積などを活かした魅力ある地域づくり」を訴えた。最後に今井会長が「北陸の自立に向けた取組みを応援したい」と締め括った。


くりっぷ No.90 目次日本語のホームページ