経団連くりっぷ No.90 (1998年11月26日)

第15回全國経済人聨合会首脳一行との懇談会/10月29日

韓国での事業構造調整を契機に
新たな日韓関係の構築を


経団連では、相互理解の促進を目的に、毎年、全経聨首脳との懇談会を開催している。今年は今井会長はじめ24名が、金宇中会長ほか20名の全経聨首脳を東京に迎えた。

金 宇中 全経聨会長

  1. 韓国経済の現状と経済界の対応(金会長)
    1. 韓国の経済危機は、韓国金融機関の外貨資金の不用意な運用と、企業の過剰設備投資によるものである。現在、金大中政権の政策と日本など先進諸国の債務繰延べなどの協力を受け、輸出拡大による外貨獲得に努めつつ、徹底した経済構造改革を推進している。
      個別企業レベルでは、企業経営の透明性確保、財務構造の抜本的な改善、重点分野の強化に努めている。特に、自動車、半導体、石油化学、精油、航空機、鉄道車輌、発電設備、船舶用エンジンの8業種21企業については、過剰設備投資の防止のため全経聨を中心に事業構造調整を進めている。これら分野には日本企業との協力が可能なものも含まれているので、積極的な参与をお願いしたい。さらに、経団連−全経聨経済・経営懇談会を活用して、情報交換と具体的な協力関係を模索すべきである。

    2. 両国経済界は、金融危機の克服と21世紀に向けた発展という共通の課題を解決するとともに、アジアの発展にも貢献する方策につき共同研究を進めるべきである。また、NAFTAやEUのような連合体は、アジアには存在しないが、韓日企業の緊密な協調による地域内協力についても両国経済界が議論を喚起すべきである。

    3. 企業は創造の集団であり、われわれ経済人は、経済危機を克服し両国の協調関係を築く上でも知恵を発揮すべきである。

  2. アジア金融危機と日本に期待される役割(鄭夢九現代精工会長)
    1. 欧米諸国の経済に陰りが見え始めており、日本には国内経済の再活性化とアジア諸国からの輸入拡大に努めてほしい。日本の金融システム安定化と内需振興のための諸政策を高く評価したい。

    2. 金融危機の再発防止とアジア経済の長期的成長に向けた基盤構築のため、日本が中心となりアジアの域内協力を推進すべきである。資金の流れを監視し必要に応じて関係諸国が協調行動をとれるような体制を整える必要がある。また、域内の需給動向と投資効率の極大化に配慮し、日韓中3カ国の経済界が産業協力を進めるべきである。

    3. ドルに過度に依存する現在の国際金融秩序を改善するため、日本には円の国際化を進めてもらいたい。それには、政府レベルでの制度改革も重要であるが、経済界における積極的な努力をお願いしたい。さらにわれわれは、「新宮沢構想」を高く評価するとともに、日本の金融機関の協力も引き続き期待している。


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