経団連くりっぷ No.90 (1998年11月26日)

カナダ経済ミッションとの懇談会(日本カナダ委員会顧問 江尻宏一郎氏)/11月9日

カナダ経済界も日本経済に期待


ブージー・カナダ日本経済人会議カナダ側議長(Alcan Aluminium社長)を団長とし、カナダの主要企業社長・会長をメンバーとするカナダ経済ミッション訪日に際し、わが国の経済情勢、アジアへの対応、日本カナダ経済関係等、広範なテーマにつき意見交換を行なった。

  1. わが国の経済情勢
    1. カナダ側より、消費の見通しに関する質問があったのに対し、経団連側より、消費者の将来に対する信頼感を高めることが重要であり、大幅な減税によって回復が見込まれる旨答えた。

    2. カナダ側の住宅消費に関する質問に対し、経団連側より、現在の着工戸数の停滞は家計への不安が主な原因だが、住宅金融公庫の低金利等を受けて改善が見込まれる、さらに、目下、経済界から要望している住宅所得促進税制の拡大の実現を期待していると述べた。

    3. カナダ側より、新聞等では日本経済について暗い論調が主流であると述べたのに対し、経団連側より、対日投資、特に不動産投資は好機を迎えており、景気は回復に向かっていると答えた。

  2. アジアへの対応
  3. 経団連側より、アジア大洋州への取組みに関し、自由化路線の堅持の必要、わが国経済の回復の重要性等につき概説した。カナダ側から、アジア全体の経済が立ち直るためにもアジアのGDPの3分の2を占める日本経済に期待する、金融危機への対応として閉鎖的な態度を取るべきではなく、さらなる貿易自由化を進めるべきであると述べた。

  4. 日本カナダ経済関係・地域貿易協定
  5. カナダ側より、両国の間に自由貿易協定を締結する可能性があるか質した。経団連側より、仮に日本カナダ自由貿易協定を実現するのであれば具体的に解決すべき問題が多く、とりわけ紛争処理メカニズムに関する議論が重要となろうと述べた。また、地域経済枠組みについて、経団連側より、EUの経済圏は市場経済を基本とするものの、米国と同じ経済構造を目指しているわけではない、また、米国もアジア経済よりブラジルなどラ米諸国の経済を重視しており、NAFTA拡大や南米経済圏に大きい関心を持っている、アジアも地域のファンダメンタルズに見合う発展を模索すべきであると発言した。カナダ側より、自由貿易協定での関税面での利点は小さくなってきている、むしろ日本とカナダの間では相互認証協定等のかたちで経済面での協力を進めることが有効なのではないかと述べた。


くりっぷ No.90 目次日本語のホームページ