経団連くりっぷ No.90 (1998年11月26日)

日本ブラジル経済委員会(委員長 室伏 稔氏)/11月4日

経済界から見た大統領再選後のブラジル経済
─ゴドイ全国産業連盟(CNI)副会長と懇談


ブラジルを代表する経済団体である全国産業連盟(CNI)のゴドイ副会長を迎え、懇談会を開催した。ゴドイ副会長はカルドーゾ政権が再選直後の10月末に発表した財政赤字削減のためのアクション・プランについて説明し、ブラジル経済は難問を抱えてはいるが、解決のための条件は整いつつあるので、将来にわたり繁栄を続けると確信していると述べた。

  1. 輸出政策の転換
  2. ブラジルは、広大な国土、豊富な労働力、豊かな天然資源に恵まれている。農業が盛んであるが、工業もGDP構成比37.0%を占めるまでに発達している。従来、厳しい輸入規制と慢性的な通貨の過大評価のため貿易は伸び悩んでいた。しかし90年代に入り、輸入関税の引き下げと非関税障壁の改善により輸入が促進される一方、世界経済の成長とともに輸出も伸びた。97年のアジア通貨危機はブラジル経済にも暗雲を投げかけたが、カルドーゾ政権は2002年までに輸出総額を年1,000億ドル以上にすることを目標に、輸出の強化策を発表した。

  3. ブラジルの戦略的ポイント
  4. ブラジル経済は韓国、中国をはじめとするアジア諸国ほど急速に躍進していないが、長期的に見て戦略的な重要性を備えている。
    第1に労働力、土地、天然資源に恵まれ、特に食糧の生産能力が大きい。
    第2に巨大な国内市場を抱え、今後GDPの伸びとともに、特に自動車などの耐久消費財分野でさらなる需要拡大が見込まれる。
    第3に世界最大規模の民営化プログラムの実施により海外からの直接投資が急速に伸びており、98年には220億ドルに達すると予測されている。
    第4に人種の多様性にもかかわらず単一言語を使用し、国内が分裂していない。また移民を積極的に受け入れている。

  5. 財政赤字削減のアクション・プラン
  6. カルドーゾ政権は1期目にハイパーインフレの鎮静化に成功したが、長年の問題である財政赤字は未解決のままである。公的債務は98年に3,460億ドルに達しており、財政赤字が重大な問題であることについては、経済界・エコノミストの間のコンセンサスとなっている。
    そこでカルドーゾ政権は再選直後の10月末に、行政改革、社会保障制度改革、税制改革などを含む財政安定化のためのアクション・プランを発表し、財政収支を2001年までにGDP成長率を4%、財政黒字をGDP比3.0%にするとの目標を打ち出した。また州政府も構造改革の実施を連邦に約束しており、州営企業のリストラ、民営化も進められている。
    公共部門の改革は容易ではないが、カルドーゾ政権には国民の強い信認が与えられているので、難問を解決し、将来も繁栄を続けられることを確信している。


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