経団連くりっぷ No.90 (1998年11月26日)

宇宙開発利用推進会議(司会 鈴木 宇宙ステーション問題部会長)/11月9日

欧州の宇宙開発利用政策につき懇談会を開催


宇宙開発利用推進会議では、その活動の一環として、宇宙開発利用に関する理解の促進に焦点を合わせ、検討を行なっている。今般、ジャン=ジャック・ドーダン欧州宇宙機関(ESA)戦略・事業開発局長が来日した機会を捉えて、欧州の宇宙産業政策をはじめ宇宙政策の立案および施策推進の責任者である同局長より、ESAの今後の宇宙開発利用政策等について、説明を聞くとともに懇談した。以下はその概要である。

  1. ESAの概要
  2. ESAは、欧州の宇宙開発を推進する政府間機構として1975年に設立された。その目的は、宇宙の平和利用原則の下で、宇宙科学技術の研究および応用化利用を促進することである。現在、欧州の14カ国が加盟し、欧州連合(EU)との連携を強化することを共同声明において確認している。
    98年度予算(約31億エキュ=約38億米ドル)を分野別に概観すると、打上げ機に25%以上、地球観測に22%、科学的プログラムに11%が割かれている。

  3. これまでの主要業績
  4. ESAの活動においては、全加盟国が参加する宇宙科学プログラム(太陽観測等)と併せて、地球観測、通信、打上げ機開発、微小重力研究等、加盟国が任意に選択するプログラムがあることが特徴である。
    地球観測は最重要分野の一つとして認識されており、ESAは、95年に打ち上げられた欧州リモートセンシング衛星2号(ERS-2)等を開発・運用してきた。
    打上げ機に関しては、商業目的を追求したアリアン・シリーズを開発してきた。現在のアリアン5型ロケットは、99年の商業打上げに向け、低コストで競争力の高い打上げサービスの提供を図る。

  5. 欧州宇宙産業の今後の動向
  6. 宇宙産業は、米国同様、欧州においても大規模な再編状況にある。仏独英伊等の宇宙関連企業は、2000年には2社程度に収斂する形で吸収合併が進むことが予想される。
    ESAは、このような宇宙産業界のグローバリゼーションにおいて、商業化へのシフトを積極的に促進している。

  7. 今後のESAの活動および日本との協力
  8. ESAの今後の戦略は、欧州の自律的能力の発展や欧州宇宙関連産業のイノベーション等を軸として展開していく。
    例えば、欧州(超国家)単位での戦略によって、米国主導のGPS(全世界測位システム)に対する依存状況から脱却し、独自の測位衛星を開発・運用することが重要である。
    日米欧加露が参加する国際宇宙ステーション計画では、コロンバス軌道上研究室(COF)の2002年打上げに向け、開発を促進している。2000年に日本のH-IIAロケットで打ち上げられる予定の先端型データ中継技術衛星(ARTEMIS)と併せて、今後とも、信頼すべきパートナーとして、日本との協力関係を推進していきたい。


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