経団連くりっぷ No.91 (1998年12月10日)

第22回日本メキシコ経済協議会(団長 川本信彦氏)/11月16日

経済関係拡大にビジネス交流こそ重要


11月16日、東京において、日墨双方合わせて約170名の参加者を得て、第22回日本メキシコ経済協議会を開催した。同開会式には、マレーシアでのAPEC非公式首脳会合に向う途上のセディージョ大統領ほかメキシコの主要閣僚が出席した。また、翌17日には、メキシコ各州の投資環境や投資機会を紹介するセミナーを実施した。

  1. メキシコ政府の自信と日本への期待
  2. 講演するセディージョ大統領

    開会式でセディージョ大統領は、メキシコ経済がアジア通貨危機の影響を受け困難に直面しているものの、思い切った歳出削減により財政均衡を維持し、引き続き安定した成長を続けられる見通しであると力強く語った。
    また、日本とメキシコとの貿易・投資関係は順調に発展しているが、両国の経済関係には、まだ大きな発展の余地が残っていると述べた。そして、日本企業が特に大きな関心を持っている2001年以降のマキラドーラ制度の変更に伴う新たなルールの導入について説明した。
    さらに慎重な表現ながら、メキシコと日本との間のより自由な貿易、投資の流れを確保するため、投資保護協定や自由貿易協定の締結の可能性を示唆した。

  3. 投資関係の具体的促進に向けて
  4. 全体会議では、最初に両国間の投資関係の促進に向けて、具体的な論点を取り上げて議論した。
    まずメキシコ側からは、大統領の話を敷延する形で、ブランコ商務工業振興大臣が、マキラドーラ制度変更後の部品関税の撤廃・引き下げ等の措置について説明した。
    また、エスピノーサ観光大臣が、石油を抜いて最大の外貨獲得源となったメキシコの観光分野における投資機会について説明し、日本からの投資を呼びかけた。
    日本側は、対メキシコ投資上の課題として前回協議会でも指摘されたサポーティング・インダストリーの育成について、具体的に日本からの技術移転プロジェクトが進められていることを紹介した。
    また近年、メキシコで進められているインフラの民活・民営化プロジェクトに対する関心を表明した。
    さらに、より長期的に安定した投資関係を構築するためには、メキシコから日本への投資をも促進することが望ましいとして、日本の投資環境、投資機会をアピールした。

  5. 企業のグローバル戦略
  6. 各分野における日墨を代表する企業が、各社のグローバル戦略における互いの国の位置づけについてプレゼンテーションを行なった。
    日本側は、豊富な資源、大きな国内市場、NAFTA(北米自由貿易協定)をはじめとする米州諸国との自由貿易協定のネットワーク等のメリットを重視し、メキシコを重要な戦略拠点として位置づけていることを説明した。
    メキシコ側は、日本企業との間に長期的な提携関係を構築し、互いの技術、立地条件を活かして成功した例を紹介し、グローバル化を進めるうえでこうした協力関係が不可欠であると強調した。

  7. 業種別分科会
  8. エレクトロニクス・情報通信、自動車・同部品、インフラ・プロジェクトの3業種に分かれ、分科会討議を行なった。
    エレクトロニクス・情報通信、自動車・同部品の2分科会においては、日本企業の最大の関心事のひとつであるマキラドーラ制度の変更について、実際に新ルールの策定に当たっている商工省の担当局長より、詳細な説明を聴取した。また、両産業分野における両国企業間の協力関係強化の方策をめぐり、具体的な意見交換を行なった。
    インフラ・プロジェクト分科会では、メキシコ側より電力、石油関連、通信、運輸、建設の分野毎に民営化プロジェクトの現状について説明を受けた後、日本側よりこうしたプロジェクトに対する関心や問題点を述べた。特にNAFTAにより、日本からの資材の輸入が米国、カナダからの輸入に比べて関税面で不利になる点が指摘され、解決策として日墨自由貿易協定の締結が提案された。

  9. メキシコ各州の投資環境
  10. 翌17日、メキシコを代表する工業州であるハリスコ州、チワワ州、コアウィラ州、北バハ・カリフォルニア州、グアナファト州、ヴェラクルス州の代表を招き、各州の投資環境や日本企業にとっての投資機会についてのセミナーを開催した。各州とも地理的優位性、安価かつ良質な労働力、各種優遇措置といったメリットを強調し、それぞれの特色を活かしたエレクトロニクス、自動車、インフラ関連、農畜産品、観光などの分野への日本からの投資を呼びかけた。これに対し日本側からは、州レベルでの情報発信の強化を求める意見が出された。

  11. 製造業の現場で意見交換
  12. 同じく17日、メキシコ側代表団の一部は本田技研工業の狭山工場を見学した後、品質管理や研究開発等について、製造現場の責任者と意見交換を行なった。


川本日本側代表団団長(右)とゴンサレス・サダ メキシコ側代表団団長(左)


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