企業会計に関するセミナー(司会 藤村正哉経済法規委員会共同委員長)/11月26日
経団連では、わが国証券市場の再生やグローバルな企業活動の要である、会計・開示基準の国際的整合性の確保に取り組んでいる。その一環として、米国財務会計基準審議会(FASB)研究・技術活動部門ディレクターのティモシー・S・ルーカス氏を招き、米国における会計基準設定のプロセス、国際化への取り組みなどについて講演を聞くとともに、懇談した。
FASBは、公認会計士と企業からの資金拠出による独立の民間機関であり、常勤の7名の理事と45名の事務局員からなる。財務報告の目的は、信頼性、透明性、中立性を伴った有用な情報提供であり、この目的を達成するために、FASBは会計基準の整備に取り組んでいる。
ただし、情報の信頼性は非常に脆弱である。経営者は、利害関係者を満足させるよう、数値を操作する誘惑にかられるが、これに屈してはならない。
企業の財務情報は、投資家や債権者のみならず、規制当局や国にとっても有用である。したがって、基準の設定にあたっては、すべての利害関係人のコンセンサスが必要である。
FASBの基準策定は、適正なプロセスを経て進められている。例えば、すべての手続、会議、文書は公開され、あらゆる関係者が検討に参加することができる。これにより、基準策定に必要な情報を企業や公認会計士から得ることも可能となる。
FASBは、証券取引委員会(SEC)、監査人である会計士、報告者である企業、利用者である投資家等が、財務報告の目的を達成するために協力することが重要であると考えている。特に、投資家保護を目的とする独立規制機関のSECとは、長年にわたりパートナーシップを築いている。
当面の課題は、
FASBでは、将来的には、世界のすべての市場で利用可能な、優れた会計基準に一本化することが究極の目標と考えている。この点に関し、国際会計基準委員会(IASC)の活動を支持している。しかし、近い将来にそれを実現することは困難であるため、現在は、各国基準との相違点の克服に努力している。むしろ、各国基準の調和よりも、市場の求めるより良い情報を提供できる基準の策定が重要だと考える。
現在、IASCでは、中心となる会計基準(コア・スタンダード)の整備をほぼ終え、来年にも証券監督者国際機構(IOSCO)によりその評価と各国規制当局に対する勧告がなされる予定である。コア・スタンダードに対するSECの評価は、今のところ不明だが、11月16日にレビットSEC委員長が発言しているように、透明性のある財務報告こそが、世界中の資本市場で求められている。
米国と同様に、有用かつ信憑性のある財務報告の重要性について、まず、企業の利害関係者間でコンセンサスを形成するべきである。
長期的視点で基準作りに取り組み、あらゆる角度から検討するべきである。また、市場参加者すべてが基準策定に参加できるよう、審議プロセスをオープンにすべきである。なお、国際活動には、引き続き参加していくべきである。