貿易投資委員会(委員長 北岡 隆氏)/11月17日
貿易投資委員会では、貿易振興会の畠山理事長(元通産省通商産業審議官)より、わが国の通商戦略について意見を聞くとともに懇談した。
ウルグアイ・ラウンド交渉が始まった1986年から今日までの間、
冷戦終了により、旧共産圏諸国のWTO加盟作業が行なわれるようになった。わが国としては引き続き中国の加盟を促進すべきと考える。同時に、冷戦終了の結果、自由主義経済が花盛りとなり、規制緩和の必要が高まってきた。日本は、鉱工業品については消費者保護等の社会的規制しか残されていない。他方、サービス分野では企業の経済的利益保護のための参入、価格規制が多く残されており、緩和が重要である。
情報化時代の到来により、電子商取引の重要性が高まっている。電子化された商品の課税について、「モノと見なして非課税とすべし」との米国と、「サービスと見なして今後議論すべし」とのEUの対立がある。
地球環境問題との関係では、環境保護目的の貿易規制の可否が問題となっている。
環境優先の考えには途上国が反発している。
アジア通貨危機を踏まえ、短期資金移動の透明性確保のためのルール策定が必要だと考える。また、WTO次期交渉のアジェンダに途上国にとってメリットのある内容を加えるとともに、途上国の鉱工業品の高関税の改善を求めていく必要がある。
次期交渉の形態として、日本、EUは包括的交渉、米国はセクター別交渉を指向。米国は、APEC早期自由化計画の9品目の内、合意の得られる分野は関税をゼロにし、他方で、自国に都合の悪い繊維の自由化やトラック等の高関税品の引下げ、さらには、TRIPSの交渉を巧妙に避けようとしている。
投資についてはWTOでMAIより緩やかなルールをつくるべきである。また、先進国の国内規制の問題の重要性に鑑み、次期交渉で競争政策に取り組む必要がある。
日本は「市場が閉鎖的」との誤った認識を改めさせるべく繰り返し説明するとともに誤解を招く民間行動は避けるべきである。
通商交渉の場で、農業やサービスなどの特殊な国内事情を訴えるのではなく、経済大国として普遍的な主張をすべきである。
日本は従来から「自由貿易協定はガットの精神に反しているので、誘われても入らない」という立場だった。しかし、今や世界のGDP上位30カ国の内いずれの自由貿易協定にも属していないのは日本、中国、韓国、台湾、香港のみである。日本は、「WTOか自由貿易協定か」という思考ではなく、双方を重層的に考える通商政策に切り替えるべきである。