経団連くりっぷ No.92 (1998年12月24日)

中華人民共和国江沢民主席歓迎昼食会(経済6団体主催)/11月28日

江沢民国家主席に対中植林協力を提案


経団連、日商、日経連、経済同友会、日本貿易会、日中経済協会の経済6団体は、国賓として来日した中華人民共和国の江沢民国家主席を経団連会館に招き、歓迎昼食会を開催した。会合には、土曜日にもかかわらず、約170名の各社の代表者が出席し、今井会長が主催者を代表して挨拶した後、江沢民国家主席がスピーチを行なった。

  1. 今井会長挨拶要旨
    1. 日中平和友好条約が調印された20年前は、経団連会長の先達である土光敏夫、稲山嘉寛両氏の尽力により日中長期貿易取決めが調印され、政治・経済両分野で日中関係の枠組みが固まった年であった。20年前のこの原点に立ち返ることにより、21世紀に向けて日中両国がともに歩む道が切り開かれるものと考える。

    2. 両国政府により発表された共同宣言は、21世紀の日中関係の枠組みを方向づけるうえで重要な意義を持つものと受けとめている。両国間の政治・経済問題ばかりでなく、国際通貨システム、環境・エネルギー問題、あるいは科学技術の開発等といった、地球全体に関わる諸問題に取り組んでいくことが、21世紀の両国国民の責務であると考える。

    3. こうした観点から、今年の8月に江沢民主席と懇談した際、私から知的交流の推進、北京−上海間の高速鉄道建設への協力、ならびに環境・緑化に関する日中協力を提案した。うち、植林に関しては、経団連中国委員会に植林協力部会を設置し、さらに日本政府、企業、学者、NGO等の関係者が集う「日中植林協力フォーラム」の設立を目指しており、小渕総理の賛同も得ている。21世紀の両国を結ぶ長期プロジェクトとして進めていきたい。

  2. 江沢民国家主席挨拶要旨
  3. 江沢民国家主席
    1. 日本滞在中、私は小渕首相と会談を行ない、平和と発展に力を注ぐ友好協力パートナーシップの樹立を決定した。これは両国関係の新たな発展段階への推進に資するものである。

    2. 両国間の経済貿易協力は、両国の幾世代の人々の努力により長足の発展を遂げてきた。双方は互いに主要な貿易パートナーであり、政府間の資金協力も順調に行なわれ、民間投融資も増えている。両国間の経済貿易協力の発展は、両国国民の利益に合致し、世界と地域経済の発展にも積極的に貢献している。

    3. 私は、両国の経済界が長い将来に着眼し、協力の新しい方途と新しい分野の開拓に努めるよう期待する。今後双方は、重点的に以下のいくつかの面における協力を強化していく必要がある。

    4. その第1は、ハイテクおよび産業技術の分野における協力の強化である。世界の科学技術の進歩は日進月歩の勢いを見せ、各国の発展と前途を決める重要な要素の一つとなっている。中日両国はこの面で互いに優位性を持ち、協力の見通しがある。技術移転を積極的に展開し、協力の質を高め、共同発展に寄与することができると考える。

    5. 第2は、環境保全分野における協力の強化である。日本は環境汚染の防止の面で経験を積み重ねており、中国は発展の過程において環境保全活動を重視している。両国がこの面における協力を強化していくことは、双方の経済の持続的発展に資するものである。

    6. 第3は、中国中西部の経済発展における協力の強化である。中国は、中西部地域の発展の歩みを加速しているところであり、日本も産業構造の調整を行なっている。中国中西部地域は広く、資源が豊富で、巨大な市場の潜在力があり、双方が経済技術協力を一段と拡大させうる。

    7. 経済のグローバリゼーションが速いテンポで発展しつつある。これは各国に発展のチャンスを与えると同時に、新たなチャレンジとリスクをももたらしている。昨年、アジアの一部の国々で発生した金融危機によって、この地域の経済が重大な衝撃を受け、世界経済にもマイナスの影響を与えている。危機を克服し、経済を再建するには、関係国自身の努力に加え、グローバルな協調と協力も必要である。

    8. 中国の改革開放はすでに20年の月日を経て、経済は大きな発展を遂げた。東アジアの金融危機の影響や、百年ぶりの水害により、われわれは前進する途上において少なからぬ困難に直面している。しかし、わが国人民は一致団結し、引き続き諸改革を推進して、対外開放の拡大を堅持している。今年の経済と社会の成長目標は達成できるものと見通している。われわれは人民元の価値を安定させる決断をし、そのために圧力に耐え、代価を払い、アジア地域の経済の安定に自分なりの責任を果たした。われわれは、日本が金融危機に対して新たな対策を作成していることに注意を払っている。日本がアジア地域で唯一の経済先進国としてさらに責任を負い、アジア経済の安定のために積極的な貢献をするよう期待する。

    9. 両国は共に、アジアと世界経済に重要な影響を有する国である。われわれはアジアおよび世界の他の国々とともに、対話と協調を強化し、公正かつ合理的な国際経済新秩序の確立を推進するため、引き続き努力しなければならない。


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