ジュアンジャン欧州委員会WTO担当局長との懇談会(座長 團野貿易部会長)/12月3日
2000年に開始されるWTO次期貿易自由化交渉に関する日本・EU政府間協議のために来日した欧州委員会対外総局のジュアンジャンWTO担当局長より、同交渉に臨むEUの戦略について説明を聞いた。同局長は、広範で包括的な交渉を指向しているなど、次期交渉に対する日本とEUの立場には共通点が多く、日欧の協力が重要である旨述べた。
WTO次期交渉は、農業、サービスの自由化交渉のみならず、広範で包括的な交渉とすべきである。その理由は以下のとおりである。
農業:
99年3月の合意を目指して、EUは補助金削減を含む共通農業政策の改革を行なっている。また、穀物など競争力のある産品もあり、国際競争に対応することが可能である。
サービス:
金融、基本電気通信分野などの既存の合意の実施がまず重要である。また、運輸(特に海運)、流通などの自由化にも意欲的に取り組んでいる。
鉱工業品:
例外のない関税交渉を行なうべきと考える。特に、米国の繊維、ガラス等の高関税品目の改善、インド、ブラジル等の途上国の高関税の引下げに関心がある。成功裏に妥結した情報技術合意(ITA)による関税ゼロ化を参考に、次期交渉では、現行の関税に基づきセクター別に関税の範囲(例えば5−10%等)を決めてはどうかと考えている。
投資:
OECDにおいてではなく、途上国も加盟し、紛争処理機能を有するWTOにおいてこそ、投資に関するルール策定作業を行なうべきである。その際、当面ポートフォリオ投資などは対象から除き、直接投資に限定した規律策定を目指すべきである。
競争:
世界的な独占禁止法や競争当局をつくることは現実的ではない。まずは公平な競争条件を確保するための規律策定を目指すことが適当である。
貿易円滑化:
先進国、途上国双方に利するものである。日本企業にも議論に加わっていただきたい。