韓国の事業構造調整に関する説明会(楠川徹・経団連−全経聨経済・経営懇談会座長)/12月1日
韓国では全國経済人聨合会(全経聨)を中心に事業構造調整を推進中であるが、今年10月に開催した全経聨首脳との懇談会の席上、金宇中会長から同調整への日本企業の積極的な協力が要請された。そこで経団連では、新たな日韓経済関係を模索する観点から標記説明会を開催することとした。韓国側は、姜晋求 全経聨−経団連経済経営懇談会座長(三星電機会長)と調整の実質的な推進責任者である孫炳斗 全経聨常勤副会長ほか関係企業役員22名が参加し、日本側は楠川座長ほか140名が参加した。
現在、韓国で推進されている事業構造調整は、世界のトップ企業の育成を目指すもので、具体的には、政府と経済界で合意された次の5つの課題の解決に努力している。
第1に、経営の透明性確保のため連結財務諸表の早期導入に向け作業を進めている。また、社外理事制度を導入しており、すでに上場企業のうち101社が社外理事と社外幹事を設置した。さらに、企画調整室や会長室は廃止し、グループの会長は主力企業の社長となり理事会で意思決定を行なっている。
第2に、系列企業間での相互支払い保証を解消するため、公正取引法が改正され、既存の債務保証は2000年3月までに完全解消すること、新規債務保証は今年4月から全面的禁止となった。また、異業種間の相互支払い保証の解消に向けて債権団と交渉中である。系列企業間の相互支払い保証は対自己資本比率で昨年4月初の47.7%から6月末の12.6%へと減少している。
第3の課題は、財務構造の改善(負債比率を99年末までに先進国水準の200%に削減)である。30大グループは負債比率削減計画を策定した。特に、5大グループは外資誘致計画(海外企業との合弁・提携、事業譲渡、海外証券発行などにより2000年までに総額290億ドルの外資を誘致予定)を発表し、すでに80億ドルの外資を誘致した。
第4の課題は、グループ別に主力業種を選定し競争力向上を目指すことである。全経聨では、すでにこの9月に構造調整案を策定している。また、政府は、過度の多角化が企業の競争力低下の原因とみて、企業間で自律的に事業交換が行なわれるよう税制上の優遇措置などを決定した。
第5の課題は、支配株主の責任強化であるが、系列会社の社外理事・監事の選任を進める一方、グループ会長が系列企業の役員となるよう検討を進めている。
事業構造調整は、原則として専門経営陣の導入、独立経営の保証、外国資本の導入を前提として当事者により自律的に進められている。事業調整がコンソシアム形態により進められる場合、当該事業は既存グループから分離され、既存の大株主は経営から排除され株主として残ることになる。
外資は50%まで誘致可能である。場合によってはそれ以上の比率も認める方向で各国の主要企業と協議中であるが、日本を最優先順位においている。
今回の事業構造調整の特徴は、自動車を除いても関係企業15社が参加する韓国産業史上最大のものであることで、その規模は5大グループ総売上高の15.5%(自動車を含めると32.7%)にのぼる。
これが成功すれば、重複投資が回避されるため今後5年間で20兆ウォンの投資費用が節約されるほか、需給調整による輸出単価の10%上昇、経営効率の向上による毎年10%以上のコスト引下げと輸出の毎年10%以上の増加が見込まれる。こうした努力を通じて、韓国企業は21世紀のリーディングカンパニーとなるものと期待される。
この事業構造調整計画は企業とメインバンク、海外投資家などの関係者が全て利益を得られる、WIN−WINモデルともいうべきものである。韓国は、アジア・大洋州地域を念頭においてグローバルな視点から調整を進めているが、これには日本企業の協力が是非とも必要である。本日の説明会を契機として、今後は個別企業ベースで協力関係の構築に向けた具体的な協議に入ってもらいたいと希望している。
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