経団連くりっぷ No.92 (1998年12月24日)

産業技術委員会 知的財産問題部会(部会長 丸島儀一氏)/12月1日

WIPO著作権条約批准に向けての著作権審議会での検討状況


1996年にWIPO(世界知的所有権機関)の外交会議で採択された著作権条約の批准に向けて、著作権審議会において著作権法改正の議論が行なわれている。そこで、産業技術委員会知的財産問題部会(部会長:丸島儀一キャノン専務取締役)では、文化庁著作権課の片山マルチメディア著作権室長および永山課長補佐から、標記テーマについて説明を聞いた。

  1. WIPO新著作権条約
  2. WIPO著作権条約の批准にあたっては、条約の規定内容と合わせた法整備が必要である。現在、99年通常国会での著作権法改正を目指して、著作権審議会で検討しており、12月中に報告書をまとめる予定である。
    特に今回法改正が必要な項目は5点あり、それぞれマルチメディア小委員会ワーキンググループ(以下、WG)および第一小委員会において検討されている。

  3. マルチメディア小委員会WGでの検討
    1. コピープロテクション等技術的保護手段の回避装置等の規制
    2. 近年、著作物にかけられたコピープロテクション等の技術的保護手段を無効化するような機器やプログラム(以下、回避装置等)が登場したために、技術的保護手段がかけられた著作物の無断複製が容易に行なえるようになったことが問題となっており、新条約ではこれらの回避行為に対する効果的な法的措置を採ることが求められている。小委員会WGでは回避装置等を製造・販売する行為に対して刑罰を科す方向で検討しているが、さらに規制対象の明確化を図りたい。

    3. 電子的権利管理情報の改変等の規制
    4. 著作物自体に電子的に組み込まれた権利者名や利用条件等の権利管理情報の改変は、著作権侵害を助長する惧れが高い。そこで、これらの情報を改変したり、権利管理情報の改変の事実を知りつつ著作物を頒布する行為等について差止請求を認め、場合によっては罰則を置くことを検討している。

  4. 第一小委員会での検討
    1. 一般的譲渡権の導入
    2. 新条約で、著作権者の権利として著作物の複製物等の譲渡に関する権利を認めることとされた。小委員会では、正当な権利者から譲渡を受けた者は、その後の譲渡(中古販売等)について、譲渡権者の許諾を得る必要はない(譲渡権は第一譲渡で消尽する)こととする方向で検討している。

    3. 上映権の拡大
    4. 条約で公衆送信権が定められたことに伴い、著作権者に、公に著作物をスクリーン等に映し出す権利(一般的上映権)を認める。

    5. 演奏権の経過措置(附則第14条)の廃止
    6. 音楽著作物のCD等による再生演奏については、激変緩和のための経過措置として、著作権者の許諾を得ることなく自由に再生演奏することが認められていたが、今般、その経過措置を廃止し、著作権者が演奏権に基づいて料金の徴収等をできることとする方向でとりまとめる見込みである。


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