経団連くりっぷ No.92 (1998年12月24日)

「変化する企業と社会貢献」懇談会(座長 島田京子氏)/11月30日

柔軟性と創造性に溢れた活力ある社会を目指して


社会の大転換期にあって、企業はどのような変革を求められているのだろうか。懇談会では、社会貢献の視点から企業の構造変革に関する課題を発掘し、その課題に対応するための仕組みづくりを検討することになった。第1回会合では「『官から民へのパワーシフト』における企業の役割」と題して、山本正 (財)日本国際交流センター理事長から説明を聞くとともに、創造的人材育成における企業とNPOのパートナーシップの具体策について検討した。

  1. 山本理事長説明要旨
  2. 「官」から「民」へのパワーシフトとは、官民の相対的な関係調整の必要性を示し、誰のための公益かを問うものである。複雑化・多元化した社会的課題に官僚システムだけでは対応できなくなっており、経済社会の運営の仕組みそのものが変わらなければならない。企業は官僚依存システムからの脱却の必要性を実感しており、社会変革におけるNPOの役割に多くの関心を寄せている。
    こうした動きは世界中で見られる現象である。経済危機下のアジアでは、安全、健康、幸福な生活などの「人間の安全保障」を視野に入れた新しいソーシャル・セーフティ・ネット構築のために、政府のみならず、NPOと企業が積極的役割を果たすことが期待されている。
    また、アメリカでは、NPOとの連携によって企業に付加される魅力に注目が集まっている。社会的意識の高い企業であることは、終身雇用か否かを問わず、良い人材を惹きつけるために重要と認識されている。組織リーダー育成の場として、NPOでの訓練を取り入れている企業もある。
    日本では、12月1日のNPO法施行により、NPOにとっての本格的試練が始まる。NPOはまだ財政基盤も弱く人材も少ないが、ハートを持ってニーズに応えようとする人が相対的に多い。そうしたNPOセクターの発展は、社会に柔軟性を持たせ、創造的な仕事を生み出し、ひいては社会的コストの削減にもつながるだろう。

  3. NPO奨学金制度についての検討
  4. 懇談会では、社会貢献活動の新しい形のひとつとして、企業とNPOが人材育成の面で連携するNPO奨学金制度について検討を進めていく。官から民への動きや「自立・自助・自己責任」社会への移行が求められる時代にあって、創造的な人材の育成は重要な課題である。本奨学金制度は、先駆的なNPOで働き社会参加する機会を学生に与えることによって、次代を担う若い世代が自ら考え行動できるような社会人として巣立つことを狙う。すでに導入を決めている企業もあり、大学関係者やNPOから好評を得ている。今後、趣旨に賛同する企業が各々個性を活かして制度を設け、活動の輪が拡がるよう、制度上の課題を整理していく。


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