経団連くりっぷ No.92 (1998年12月24日)

宇宙開発利用推進会議 宇宙ステーション問題部会(部会長 鈴木敏夫氏)/11月27日

国際宇宙ステーション計画の新たな展開とわが国の取組み


日米欧加露等の15カ国が参加する国際宇宙ステーション計画は、本年11月の米国の基本機能モジュールの打上げ成功により、本格的な建設に向けて始動した。わが国は、独自の実験棟、JEM(Japanese Experiment Module)を提供することで同計画に参加している。そこで、当部会では、科学技術庁の中澤審議官、藤田宇宙利用課長ならびに宇宙開発事業団の村山理事を招き、国際宇宙ステーション計画およびJEMの概要等について説明を聞いた。

  1. 国際宇宙ステーション計画の概要
  2. 1984年、米国の日欧加への参加招聘を契機に発足した国際宇宙ステーション計画は、冷戦終結後、ロシアも含めた国際協力の下で推進されており、人類が将来宇宙で活動する基盤を形成し、21世紀の宇宙開発の発展を左右する重要なプロジェクトである。
    国際宇宙ステーション計画の意義は、長時間にわたる微小重力、高真空等、地上では得難い実験環境を利用することにより、宇宙科学技術のみならず、科学技術全般の発展に寄与することにある。また、宇宙環境利用による新規産業創出の促進にも、大きな期待が寄せられている。

  3. 今後のステーション建設計画
  4. ステーションの建設は、今後、順次打ち上げられる各国の実験棟等を高度約400kmの地球周回軌道上で組み立てていき、12月に米国のモジュール、来年7月にロシアのモジュールを打ち上げる予定である。その後、ロシアの財政状況等を考慮しつつ、来年半ばを目途に打上げスケジュールの見直しを行なう予定である。現在のところ、40数回の打上げを経て、2004年以降に本格的な運用・利用を開始する予定である。
    JEMは、2001〜2年に米国のスペースシャトルによって打ち上げる予定である。その目的は「軌道上研究所」として、材料、ライフサイエンス分野の研究、地球・天体観測、理工学・通信実験等、広範な研究開発を実施すること、そして宇宙環境利用の推進および有人宇宙技術等の技術習得等にあり、国際社会に対する科学技術面におけるわが国の貢献等も期待されている。

  5. 宇宙環境利用の促進
  6. ステーションの実現によって、宇宙環境特有の性質を活用した研究開発を恒常的に実施することが可能となり、新たに得られた知見を地上での生産活動等に応用することが期待されている。
    今後、新規産業の創出という観点から、ステーションの活用を図る上で、民間企業の積極的な取組みが必要不可欠である。
    そのためにも、本計画が、宇宙環境の利用を通じて、科学技術の発展や地球規模の問題にも貢献できる国際協力プロジェクトであることを国民に理解してもらい、より積極的な支援を得るために必要な広報・普及啓発活動を推進していきたい。


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