経団連くりっぷ No.93 (1999年1月14日)

なびげーたー

循環型社会における産業界の課題

参与 太田 元


21世紀は循環型社会を目指して企業の先進的な取組みが加速するものと思われるが、産業界が当面フォローすべき課題について概観しておきたい。

  1. まず、地球温暖化対策である。経団連環境自主行動計画に基づく産業界の取組みと改正省エネ法の実施が先行する中で、昨秋成立した地球温暖化対策推進法に則り、基本方針が今春にも閣議決定される。基本方針の根幹は、省エネ・新エネ・原子力の推進であるが、とりわけ、原子力の利用は広く国民の理解を得て推進することがわが国の6%削減目標達成の鍵を握っている。経団連自主行動計画の達成も原子力の利用に負うところが大きく、基本方針の帰趨に注目したい。共同実施等の柔軟性措置の活用や経済的手法も検討課題である。

  2. 次に、廃棄物の減量化、再利用・リサイクルの一層の推進があげられる。使用済み製品のリサイクルと処理について、生産者に全て義務づけるべきとの主張(EPR:Extended Producer Responsibility)が北欧の一部を中心になされつつあり、OECDは5月以降にEPRに関するガイダンス・マニュアルをまとめる予定である。本問題については事業者のみならず、行政も消費者もそれぞれの役割を果たすという観点から、わが国ではすでに容器包装については市町村(税金)と事業者が、家電製品については消費者と事業者がそれぞれ費用を分担する制度が出来ており、産業界も賛成してきた。EPRを廃棄物・リサイクル政策に採用しようとする国内の動きに対し、産業界の考え方が適切に反映されるよう働きかけていく必要がある。

  3. 有害物質の利用抑制・適正な管理について、政府は今通常国会において環境汚染物質排出・移動登録制度(PRTR)の法制化を目指している。経団連としても制度化に先駆け、すでに産業界の自主的なPRTR第2回調査を実施しており、4月に結果を公表する予定である。こうした取組み実績を踏まえ、制度が本来の目的に沿い、企業の自主的取組みを最大限尊重する仕組みとなるようウォッチしていくことが肝要である。

  4. これに関連して、最近環境ホルモン(内分泌撹乱物質)がマスコミ等で盛んに取り上げられるようになったが、これら物質は総じて有害性の程度や人体への影響等につき不明な点が多い。にもかかわらず、新法を導入して種々の規制を課すべきだとする考えが間々見受けられる。もとより、産業界が有害物質の削減・適正管理に努めることは当然の責務であるが、他方で科学的知見が不十分なままいたずらに過剰な規制が設定されることのないよう、注意する必要がある。

この他、今年が環境基本計画の見直しの年にあたっていることも注目しておきたい。


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