来賓挨拶
99年1月にいよいよ欧州統一通貨であるユーロが導入される。ユーロは取引、投資、金融などの手段として大いに利用されるようになり、国際的な金融市場の安定にも寄与することになろう。
EMU(Economic and Monetary Union−経済通貨同盟)の結成は政治的動機ということもあるが、経済的利点が明らかであるので粘り強く追及してきた。企業にとって、ユーロ圏内の取引で為替リスクが取り除かれるメリットは大きく、マクロ経済も安定感が高まる。欧州は、経済的には統合の度合いを増しているが、その経済運営は統合されていないという奇妙な状況にあった。欧州中央銀行(ECB)は独立性が保証され、第一に物価の安定に取り組むことになっており、欧州経済の安定に大いに貢献できる。
国際的には、円や米ドルとの関係でユーロの役割に対する関心が高まっている。ECBは中立の立場を堅持し、現時点において、EU加盟国以外の国との公式な為替レートの取り決めに参加することは予定してしない。ただし、ECBの金融政策とユーロの為替レートとの間に、明白かつ持続的な乖離が発生した場合には、介入を決定することもあり得る。
ユーロ発足の心理的影響について大事なことは、ユーロによってEUが初めて「目に見える」存在になることである。ユーロは多くの欧州市民にとって、一体感の持てる初めての象徴となろう。
1970年代と80年代の欧州は、政治的にも経済的にも大変厳しい時代だった。繁栄を謳歌した戦後のブームは過去のものとなり、「欧州硬化症」が問題となった。そして、考えられたのが構造改革のための市場統合プログラムである。その主な特色は、
今や欧州連合は、経済統合と地理的広がりにおいて「クリティカル・マス」、つまり成果を得るために十分な規模を確保した。欧州連合はもはや「未来形」ではなく「現在形」で語れる存在になったのである。