経団連くりっぷ No.93 (1999年1月14日)

第1回コーポレート・ガバナンス委員会(委員長 片田哲也氏)/12月14日

デラウェア州ジェイコブス衡平裁判所判事と
コーポレート・ガバナンスについて懇談


経団連では、昨年7月より、副会長・評議員会副議長・関係委員長等小人数で構成するコーポレート・ガバナンス特別委員会を設け、グローバルスタンダードに合致したコーポレート・ガバナンスのあり方を検討してきた。9月には、監査役機能の強化と代表訴訟制度の見直しを求める緊急提言を取りまとめ、その実現に向けて、政府ならびに与野党に働きかけてきたところである。その後も、一部企業による自発的な執行役員制度の導入、株式持合の解消進展、外国人投資家の拡大などを背景として、コーポレート・ガバナンスに関する経済界の関心は一段と高まりを見せている。そこで、このほど特別委員会を常設委員会に改組し広く会員の参加を募り、株主総会やディスクロージャーのあり方などについて、幅広く検討を行なうこととした。第1回委員会では、米国デラウェア州で会社法関係の訴訟を専門的に扱う衡平裁判所のジャック・B・ジェイコブス判事を招き、デラウェア会社法下のコーポレート・ガバナンスの状況や日本への提案などについて説明を聞き、懇談した。以下は同判事の説明概要である。

  1. 日本版ビッグ・バン
  2. 日本版ビッグバンにより、内外からの投資促進による証券市場の再活性化、また活発なM&Aによる経済再構築が促進されることが期待されている。そのためには、

    1. 会計基準改革、
    2. 証券市場改革とともに、
    3. コーポレート・ガバナンス改革、
    を実現することが必要となる。

  3. コーポレート・ガバナンスにおけるデラウェア会社法の役割
  4. 米国では、株主・投資家が企業の資金調達の源泉であるのに対し、日本では銀行がその役割を担っている。また、米国では、会社法が州法であるため、コーポレート・ガバナンスは州レベルで執行される。フォーチュン500の半数以上の企業や多くの日系企業が、デラウェア会社法の下で設立されているが、これは、設立手続きが簡易であることに加え、株主と経営者の係争を専門に扱う、衡平裁判所が存在していることが理由である。衡平裁判所は陪審制度、懲罰的損害賠償制度の無い法廷であり、経済取引に対応した迅速な判決により、投資家の権利を保護している。

  5. 日本への提案
  6. 株式持合に支えられてきた日本のガバナンスシステムを直接金融重視のシステムへと変化させていくためには、M&Aに関する法整備を行なうことの他、投資家と経営者との間の紛争を解決する行政機関の設置が必要と考える。デラウェア州では、衡平裁判所がその役割を果たしているが、日本では、例えば、証券取引等監視委員会や金融監督庁がそうした機能を兼ねることも考えられよう。株主権利の尊重を明確にすることで、投資家の日本企業への信頼が高まり、証券投資の活性化が期待できる。

なお、ジェイコブス判事との懇談のあと、委員会の今後の進め方について出席者間で討議し、株主総会、取締役会、ディスクロージャーのあり方等を取り上げていくこととなった。


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