経団連くりっぷ No.93 (1999年1月14日)

貿易部会(部会長 團野廣一氏)/12月21日

包括的なWTO次期交渉に向けた働きかけを強化


貿易部会では、外務省経済局の横田審議官より、WTOの最近の動向および次期交渉に向けたわが国政府の取組みについて聞くとともに懇談した。

  1. WTOの当面の日程
    1. WTOは、

      1. WTO協定および多角的貿易協定等の実施・運営、
      2. 多角的貿易関係に関する交渉の場および実施の枠組みの提供、
      3. 紛争解決手続き了解の運用、
      を主たる任務とする。

    2. 2000年からの次期交渉に向けた準備プロセスがジュネーブを中心に進められている。12月の一般理事会では、農業、サービスなどすでに交渉を行なうことで合意されている課題について議論した。99年1月の次回の一般理事会では、シンガポール閣僚会議で作業開始を合意した投資、競争、政府調達の透明性等の問題および加盟国からの新規提案について検討する。その中で、日本とEUが提案している鉱工業品の関税引下げ交渉についても取り上げる予定である。

  2. 各国への働きかけの強化
    1. 途上国の多くは次期交渉において農業、サービス、一部WTO協定の見直し等、すでに合意されたアジェンダのみを扱うべきであるとの立場をとっている。他方、米国は、セクター別交渉を行なうべきであるとこれまで述べていたが、国内の意見を聞く必要があるとの理由から、最近では立場を明確にしていない。
      日本とEUは、どのようなアジェンダも予め排除しない「包括的交渉」を指向している。特に日本は、鉱工業品関税交渉に加え、投資、政府調達の透明性、さらには貿易と競争に関する規律づくりの交渉にも着手したいという立場である。他方、WTOでの貿易と労働の規律策定については消極的である。

    2. 現在、ジュネーブなどで各国がそれぞれの立場から他国に対する働きかけを行なっている。日本も次期交渉に関する欧州委員会との協議を開始した。今後、東南アジア諸国等に対する働きかけをさらに強化していく予定である。

    3. また、交渉に向けて、日本国内の足場固めが重要であり、関係各方面との意見交換を行なっている。日本の利益はどこにあるのか、何を取り、何を守りたいのかを明らかにしていく必要がある。例えば、ウルグアイ・ラウンド後、日本の鉱工業品の平均関税は世界的に見ても低い水準にあるが、繊維や農業等、高関税率が残る分野もある。

    4. 途上国は現在の合意内容の実施ですら困難であるため、さらに交渉範囲を広げることには消極的である。これに対し、日本としては技術協力など中長期的な支援を行なうと共に、途上国が交渉に利益を見出せるようなアジェンダを出していく必要がある。例えば、日本の特恵関税のスキームを途上国にとって今以上に良いものにできないか検討していくことも考えている。


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