経団連くりっぷ No.93 (1999年1月14日)

今後の日米協力を考える部会(部会長 田口俊明氏)/12月17日

日米自動車交渉に見る民間の役割


今後の日米協力を考える部会では、日米交渉を中心に国際経済交渉において民間の果たす役割につき検討を行なっている。その一環として、日本情報処理開発協会の富永孝雄常務理事(元日本自動車工業会副会長・専務理事)より、日米自動車交渉の経緯と官民の役割について説明を聞いた。

  1. 日米自動車交渉の歩み
  2. 1980〜90年代の日米自動車交渉の軸となったのは、81年に始まった対米輸出自主規制である(94年に規制措置撤廃)。これ以降政府間では、MOSS協議(86年〜)、構造協議(89年〜)と交渉が続けられることとなった。
    これと並行して民間も、現地生産の拡大を進める一方、自動車購入促進ミッションの派遣(80年〜)をはじめ、日本自動車工業会(JAMA)−米国自動車部品工業会(MEMA)協議会(87年〜)、個別商談会(90年〜)の開催等に取り組んできた。こうした中、92年1月の日米首脳会談では、同時に開催された業界首脳会談を機に策定された各社の部品購入計画を踏まえ、米国製部品の購入に関するアクション・プランが提示された。
    しかしさまざまな要因から自動車分野の貿易赤字は急速に改善せず、93年の包括協議で米側の要求はより結果主義的となり、成果を評価する客観的基準の導入も求められた。日本側は、数値目標設定に反対するとともに、個別企業の部品購入は政府介入事項ではないと拒否した。より政府寄りの全米自動車工業会(AAMA)の発足もあり、一時は業界間交渉も中断したが、95年6月の日米自動車合意成立後は、業界間の協力も再開している。

  3. 日米自動車交渉の特色
  4. 自動車交渉は政治的側面が濃く、米側の政権交代による影響のほか、AAMAの発足に伴う業界の保護主義化、議会に対する全米自動車労組の影響も覗える。
    また米側は、民間の購入計画もスーパー301条の対象にしようとするなど、多様な政策を展開してくるため、日本側も多岐な対応が求められた。

  5. 民間業界の基本姿勢
  6. 民間企業・業界としては、政府に対する協力に加えて、ビジネス・プランの公表(各企業)、国際協調のためのアクション・プランのとりまとめ(JAMA)、JAMA−MEMA協議会開催等に積極的に取り組んだ。ただデータコレクションについては、数値目標等に転用された反省から賛否が分かれている。

  7. 今後の自動車問題の所在
  8. グローバル化、規制緩和、ハーモニゼーションの進展、地球環境問題の深刻化等、自動車産業をめぐる環境は変化している。相互依存関係は深化しているが、貿易・通商摩擦未然防止の基本は業界の協力・協調にある。従来の地道な努力の継続とともに、二国間関係だけでなくマルチの場への積極的な参加、幅広いPR活動の展開も必要である。


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