経団連くりっぷ No.94 (1999年1月28日)

創造的人材育成協議会企画部会(部会長 森本昌義氏)/1月14日

時代を先取りした大学改革を試みる多摩大学
−クラーク学長に聞く


創造的人材育成協議会企画部会(部会長:森本昌義 ソニー上席常務)では、教育改革を試みている大学等から、改革の実践内容を聞くとともに、創造的人材育成の観点から企業として取り組むべき課題を検討することとしている。今回は、相対評価による成績評価や先生の休講は認めない等、時代を先取りした大学改革に積極的に取り組んでいる、多摩大学のグレゴリー・クラーク学長より話しを聞くとともに、意見交換した。

  1. 多摩大学の改革の実践例
    1. 学生による授業評価
      学生による授業評価を導入したが、学生は、案外、客観的に評価を行なっている。結果は先生にフィードバックされ、先生方も今後の授業のあり方を考えるようになり、有効に機能している。

    2. 相対評価制度
      成績はAからDで評価されるが、それぞれを取得できる割合が決められているため、皆がAやBを取得できない。成績は、前週の授業内容と宿題から出題する小テストを行なって決める。学生も、評価されるとなればまじめに勉強する。

  2. 今後の改革の方向
    1. 暫定入学制度の導入
      入学者500名中、下位200名を暫定入学者とし、1年後に、足切りの試験によって、優秀な暫定入学者を、正規入学として受け入れる制度の導入を検討している。暫定入学者は学費の一部を負担するが、正規入学となる2年次に入学金を払うことになる。

    2. GPA(グレード・ポイント・アベレージ)制度の導入
      A、B、C、D、Fの5段階の成績評価を4、3、2、1、0とポイント化し、取得したポイントの平均が、学内平均以下である者に、退学勧告をするという、GPA制度を導入したい。この制度では、AやBを積極的に取得することが求められるため、学生も勉強するようになろう。

    3. ダブル専攻制度と飛び入学の拡大
      日本でも、グローバル化と視野拡大のために、大学在学中に、外国語と専門の2つを専攻できるようにすべきである。2つの専門を修得していれば、ビジネスにも役立とう。また、創造的な人材を育成するために飛び入学を、すべての大学・学部で導入すべきである。

    4. 産学の連携
      産学の連携ということでは、3年生を対象に、夏休みにインターンシップを行なっている。また、経営学は、社会経験を積んだ後に、ビジネススクールに戻って勉強すべきとの観点から、多摩大学は、土曜日および平時の夜間のみに授業を行なう経営情報学の夜間大学院を設置し、職業人のみを受け入れ、教育・研究を行なっている。


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