経団連くりっぷ No.94 (1999年1月28日)

日本ミャンマー経済委員会(委員長 鳥海 巖氏)/1月12日

ミャンマーの最近の情勢と今後の見通し
−朝海駐ミャンマー大使との懇談会


アジア・大洋州地域大使会議に出席するため一時帰国中の朝海駐ミャンマー大使を招き、ミャンマーにおける最近の情勢と今後の見通しについて聞いた。

  1. 国内経済
  2. ミャンマー経済は、相変わらず低空飛行が続いているが、新しい発展に向けた動きが、少しではあるが、出始めている。ある学者によると、統計に表れないミャンマーのインフォーマルな経済は、GDPと同じ額にのぼるとのことである。また、昨年の稲作の状態も良く、国内用に備蓄をした上で、数万トン規模の対マレーシア輸出が始まっている。農業の機械化も徐々に進んでいるものの、燃料のディーゼル油を輸入に依存していることが障害になっている。
    ミャンマーは、対GDP比6%台にのぼる財政赤字をファイナンスするために、通貨供給量を増加させており、これが2桁台の物価の上昇(1997年は29.7%)の大きな原因になっている。また、徴税率が著しく低いことも問題である。

  3. 国際収支
  4. ミャンマーは、恒常的に貿易赤字を抱えている。食料品を始めとする消費財の輸入が増加する一方で、農産物を中心とする輸出の伸びは、94年度以降頭打ちとなっている。このため、外貨準備も乏しくなっているとみられる。

  5. アジア通貨危機の影響
  6. ASEAN諸国からの投資が大幅に減少している。また、為替も、危機の影響を受け大きく減価した。ミャンマーも、インドネシアやタイが受けた影響とは異質かもしれないが、アジア通貨危機の影響を受けている。

  7. 問題点
  8. ミャンマーには、未開発の天然資源や優秀な人材等、発展のポテンシャルはあるが、大きな問題もある。その最たるものはインフラの未整備である。特に最近では電力の不足が深刻で、ヤンゴン市内の停電は1日8〜16時間にのぼる。その原因は、水不足のような一時的な要因に加えて、発電・送配電設備の老朽化、近代ビルの急増による需要増など構造的な要因があるとみられる。

  9. 対ミャンマー支援
  10. 日本政府は、昨年3月にヤンゴン国際空港向けの円借款を一部再開した。その後、憲法制定作業や民主化に大きな進展が見られない等、ODAの本格的な再開のきっかけとなる良い材料が見つからない。民主主義、ODA大綱、アメリカとの関係等を考慮しつつ、人道的観点から経済協力を行なう道を引き続き探っていきたい。


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