経団連くりっぷ No.94 (1999年1月28日)

日本コロンビア経済委員会/12月15日

米国との関係改善は新政権の大きな収穫


日本コロンビア経済委員会では、99年7月にコロンビアで開催される予定の次回合同会議に向けた準備の一環として、日本貿易振興会の河田前サンタフェデボゴタ事務所長(現事業統括部調査役)を招き、コロンビアの政治・経済・社会情勢について説明を聞いた。

  1. 治安問題
  2. コロンビアの治安問題は3つのケースに分けられる。第1はゲリラの活動に巻き込まれるケースであるが、主要都市等の安全な地域でビジネス活動を行なう限り問題はない。第2はマフィアによるテロ活動であるが、すでに2大カルテルと言われたメデジン・カルテル、カリ・カルテルによるテロ活動は終息ないし沈静化している。第3は盗難等の一般犯罪で、駐在員にとってはむしろこれが最大の問題である。
    全体としてコロンビアについて、「それほど危険ではないにしても安全ではない国」という言い方が適当かと思う。

  3. 新政権の誕生と米国との関係改善
  4. コロンビアは96、97年と、米国により麻薬撲滅協力国として不認定とされた。しかし98年は米国の国益上の理由により協力国と認定された。つまり、不認定の場合コロンビアの投資案件に米輸銀の融資が使えず、その結果入札等において米国企業が外国企業に対し不利になる恐れがあったためである。
    選挙の結果、米国が敬遠していたセルパ氏ではなくパストラーナ政権が誕生した。サンペール前大統領は、麻薬資金疑惑により米国への入国ビザを取り消されていたが、パストラーナ大統領にはそのような汚点はなく、10月に米国を公式訪問し、クリントン大統領と会談を行なっている。新政権の誕生により米国との関係が好転したことは、コロンビアにとって大きな収穫である。

  5. 経済情勢
  6. 91年の改正憲法において、中央銀行の自主独立性が確立され、政府から独立して金融、通貨、為替政策を運営できるシステムとなった。他の中南米各国では、過去にポピュリスト政権の下で中央銀行が紙幣を増刷して通貨を無制限に供給し、結果としてハイパーインフレが発生したが、コロンビアではこうした経験はない。
    パストラーナ新政権は、財政の膨張が経常赤字、財政赤字といった対外不均衡をもたらしているという現状認識を持っている。そのため政権発足後、現在GDP比約5%を記録している中央政府の赤字を4%未満に押さえることを目標に、出張費の削減や不要不急プロジェクトの延期、定員外公務員の削減を内容とする財政支出の削減に直ちに着手している。また11月16日に経済緊急事態宣言を行ない、翌17日より預金口座からの引き出し、移転に際し2/1000の課税を実施した。これにより得た税収は、94年ごろ発生したミニバブルの影響により不良債権を抱えている金融システムの安定化のために使われることになっている。


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