経団連くりっぷ No.95 (1999年2月10日)

ラング元USTR大使との懇談会(座長 團野貿易部会長)/1月26日

次期ラウンドに向け、日本の国内体制整備が急務

−WTO次期貿易自由化交渉に対する米国識者の見解


米国政府の代表としてWTOの基本電気通信交渉および金融サービス交渉を担当したラング元USTR大使より、2000年に開始されるWTO次期貿易自由化交渉に関する米国の立場等について説明を聞いた。

  1. 次期交渉のアジェンダ
  2. WTO次期交渉をめぐる議論が米国内で活発化している。同交渉に対する現時点での米国の立場は以下のとおりである。

    1. 関税・非関税障壁:
      鉱工業品の関税引下げは主要課題のひとつである。主要途上国の平均関税率は20〜35%と高水準であり、特定分野における関税の一律引下げを目指すべきである。非関税障壁では、基準策定(例えば、製品の安全性などについて、輸入阻害的とならない基準をつくる)を主張している。

    2. 農業:
      ウルグアイ・ラウンド交渉では、農産品関税引下げにより国内の政治的支持を取り付けることに成功した。今後、さらなる自由化を目指すとともに、国家貿易企業の規定見直し、バイオ製品の安全性等とWTO協定との関係等について議論を進める必要がある。

    3. サービス:
      電気通信、エクスプレス・デリバリー、流通、建設、自由職業が主要関心分野である。電子商取引等のサービス分野の規制基準の策定も重要である。

    4. 知的所有権:
      途上国が2000年までにTRIPSを実施できるか等問題が多い。

    5. 政府調達:
      複数国間である現協定の参加国拡大が課題である。

  3. WTO体制の強化
    1. 次期交渉のアジェンダの範囲外ではあるが、WTOに対する支持拡大のためにも、文書の早期公開など透明性確保に努める必要がある。

    2. 途上国が合意した内容を実施していく能力を強化していくことも重要な課題である。また、税関制度の簡素化など貿易円滑化、紛争処理機能の強化などについても議論が必要である。

  4. アジェンダ実現に向けた戦略
    1. 米国国内では、議会、州政府などの理解を得て、交渉に向けたコンセンサスづくりを強化することが急務となっている。

    2. 途上国の積極的な参加を得るため、一部の分野については一括合意のアジェンダから除くことも一案である。

    3. 交渉を成功に導くためには、産業界の支持と積極的関与が不可欠である。ウルグアイ・ラウンドの際の知的所有権、ITA、金融サービス交渉などでは、産業界の関与が成功に導いた。
      日本も、競争導入を通じた国内市場の強化、政府間交渉への民間の関与の強化などを通じて積極的な役割を果たしていただきたい。


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