経団連くりっぷ No.95 (1999年2月10日)

今後の日米協力に関する部会(部会長 田口俊明氏)/1月20日

日米鉄鋼交渉の経緯と今後の課題について聞く


今後の日米協力を考える部会では、日米交渉を中心に国際経済交渉において民間の果たす役割につき検討を行なっている。その一環として、新日本製鐵の樋野隆弘 経営企画部担当部長より日米鉄鋼交渉の経緯と問題点、松本健 公正貿易センター所長より、今後の通商交渉をめぐる諸課題について説明を聞いた。

  1. 日米鉄鋼交渉の経緯と問題点
    樋野 新日本製鐵経営企画部部長
  2. 鉄鋼交渉は、1950年代半ば以来、通商法や独禁法、関税等多様な問題が提起され、常に通商摩擦の中心におかれてきた。政府は、対米輸出自主規制をはじめトリガー価格制度、VRA、MSA協議等の解決策に取り組み、日米鉄鋼協議やOECD鉄鋼委員会等の枠組みには民間も参加してきた。
    民間としては、これら政府間交渉への協力のほか、独自に映画やパンフレット作成をはじめ対米広報活動に取り組み、中でも鉄鋼アナリストの招聘は一定の効果がみられた。各社ベースでのJVへの取り組み、世界の鉄鋼業首脳が参加する国際鉄鋼協会(IISI)での活動も、直接摩擦回避に繋がるものとして過大評価はしえないが、一定の効果があったといえよう。
    いわば考えられうるあらゆる提訴がなされ、あらゆる解決方法が模索され、実行された鉄鋼通商史であるが、今後とも米鉄鋼業自体が十分な競争力を持ち得ず、財政的に苦境に陥れば、相変わらずアンチダンピング(AD)や通商法201条、301条等の対抗手段が持ち出されよう。

  3. 今後の通商交渉をめぐる諸課題
    松本 公正貿易センター所長
  4. WTOはルールに基づく自由な国際取引を推進するものと評価されている。しかしAD協定は、紛争処理に関する規定が尻抜けとなっており、よほどのことがない限り各国の措置はWTO協定違反とはならない。
    このところ対米鉄鋼輸出をめぐりADが注目されるが、保護主義的運用を行なってもWTO違反とされない惧れは強い。近年、途上国によるAD措置調査案件が増加しているが、各国が保護貿易的なAD措置を重ねた場合、30年代の高関税掛け合いによる貿易縮小と同様の結果が懸念される。
    こうした惧れがある中で、「自主規制のような制度」を考えることは意味があるかもしれない。

    1. 膨大な短期資金の国際的な移動、
    2. 産業関連の環境汚染の進行、
    といった環境の変化も生じており、ベストではないが、再検討の余地はあるのではないか。
    一方、日本では、企業が外国の不当な行為に対し、改善を求めるよう政府に正式に申請するための法的根拠がない。民間が通商問題に関わる上で法の整備は重要であり、積極的にルール作りに関わっていくべきである。


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