経団連くりっぷ No.96 (1999年2月25日)

第35回四国地方経済懇談会/1月28日

本四3橋時代の到来と広域経済文化交流圏の構築

四国地域の自立的発展に向けて


経団連では四国経済連合会(四経連)と共催により、標記懇談会を高松市にて開催した。当日は、四経連側から山本会長をはじめ地元経済人約150名が、経団連から今井会長、伊藤・樋口・古川・辻・前田の各副会長が出席し、「21世紀に向けた発展基盤の整備と地域の自立に向けて」を基本テーマに、経済の現状と課題、四国の果たすべき役割などについて、活発な意見交換を行なった。

  1. 開会挨拶
    山本 博氏(四国経済連合会会長・四国電力会長)
  2. 四国経済は極めて深刻な状況が続いている。四経連の昨年12月の調査では、景気が「下降」ないし「底ばい」と見る企業が全体の98%に達している。一日も早く景気回復への明るい展望を開くには、政府の一連の経済対策や金融システム安定化策を速やかに実行していくとともに、引き続き需要の拡大、金融不安の解消、雇用の安定化に取り組んでいくことが必要である。
    EU通貨統合のスタート等、世界経済は大きく変動しつつあり、安定した新たなグローバル経済の確立が重要な課題となっている。四国の企業もアジアとの関係が一段と深まっているが、アジアとの共生の時代を迎えた日本が果たすべき役割は極めて大きくなっている。
    こうした内外の大きな変革と厳しい経済環境の中で、四国地域の自立的発展に向けた取組みを進めていく必要がある。本四3橋時代の到来を活かし、四国は西日本全体をにらんだ広域的な交流と連携の要としての役割を果たしながら、新しい発展を目指していくことが重要である。こうした観点から、四経連では、橋を介し本州と四国の主要都市が連携する広域都市圏の形成、歴史・文化道の整備を進めている。

  3. 四経連側発言
    1. 四国経済の現状と課題
      水木儀三氏(四国経済連合会副会長・伊予銀行会長)
    2. 四国経済は、内需の低迷やアジア向け輸出の不振等から生産指数が13カ月連続で前年を下回り、個人消費も低迷を続ける等、厳しい状況が続いているが、現在を経済再生のための転換期と捉え、産みの苦しみを乗り越えて、新たな発展につなげていく必要がある。四国における本四3橋時代の幕開けという大きな変革期をチャンスとして捉え、景気浮揚に結びつけていくとともに、新しい四国を創造する礎としたい。
      そのような観点から、今後の四国の課題として、広域経済文化交流圏の形成、強靭な産業構造を実現する企業群の育成、高度情報社会の構築、世界に開かれた四国の実現に取り組んでいきたい。

    3. 強靭な産業構造の構築に向けて
      住友俊一氏(四国経済連合会副会長・阿波銀行会長)
    4. わが国経済を早期に回復軌道に戻すためには、行政改革、社会保障制度改革、税制改革等を推し進め、内外の環境変化に対応できる新たな経済社会システムを構築する必要があるが、同時に、新産業の創出や既存産業の高付加価値化によって経済を活性化し、世界と競争できる強靭な産業構造を構築することが重要な課題である。四国には独自の技術を活かして特定の分野で日本一、世界一を誇る企業が数多くある。このようなベンチャー気質にあふれる四国のスピリットを活かしながら、強靭な産業構造を実現していくために、産学官の連携による技術開発力の強化、規制緩和の積極的な推進、社会全体のネットワーク化を進めるための高度情報化の推進を図ることが必要と考える。

    5. 地域の自立に向けた社会基盤の整備
      三木俊治氏(四国経済連合会副会長・阿波製紙会長)
    6. 四国が自立的発展を遂げ、国土の均衡ある発展に寄与していくためには、西日本の各地域が活発に交流、連携する広域経済文化交流圏が形成され、その中で四国が積極的な役割を果たしていくことが不可欠である。そのためには、本四架橋につながる高速交通基盤、高度情報通信ネットワーク、災害に強い安全で安心できる生活基盤等、確固たる社会基盤の整備を四国域内で進めていくことが必要である。

    7. 本四3橋を介した広域都市圏の整備
      赤澤庄三氏(四国経済連合会副会長・帝國製薬社長)
    8. 本四3橋の完成という広域的な交流・連携の基盤が飛躍的に強化されるチャンスを活かし、広域経済文化交流圏の構築に取り組んでいくことが緊要な課題である。中でも、近接する都市間の交流・連携を促進し、一つのまとまりのある広域都市圏を形成することは、実質的に大きな人口集積を図り、地域の成長を遂げていく上で重要である。とりわけ岡山・倉敷・高松都市圏は、真に豊かな広域経済文化交流圏の核となる条件を十二分に備えたエリアであり、200万人規模の人口を擁する中枢的な広域都市圏の形成に向け、四経連として取り組みを進めている。

    9. 歴史・文化道の整備
      伊東弘敦氏(四国経済連合会副会長・四国旅客鉄道会長)
    10. 歴史的な文化遺産を結ぶ道路網等の整備を進め、誰もが容易に価値ある歴史や文化に触れ親しむことのできる環境を作り出そうと、四国の官民が一体となって推進協議会を設置し、歴史・文化道の整備に取り組んでいる。歴史・文化道を地域連携軸や国土軸を介してさらに域外の各地域に繋げ、連携を図りながら経済的にも文化的にも豊かで充実した広域経済文化交流圏を形成していきたい。

  4. 経団連側発言
  5. 樋口副会長は「経済戦略会議の提言を踏まえた日本経済の再生」を訴えた。前田副会長は「経団連として引き続き税制改革の残された課題に取り組んでいく」、辻副会長は「環境問題における企業の自主的取組みの効果や成果をアピールしていく」と強調した。また、伊藤副会長は「社会保障制度改革の実現」、古川副会長は「全国的な視点からの首都機能移転の推進」を訴えた。最後に今井会長が「本四3橋時代の到来により、四国を中心に広域経済文化交流圏が形成されていくことを強く期待したい」と締めくくった。


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