経団連くりっぷ No.96 (1999年2月25日)

第119回関西会員懇談会/1月29日

日本経済の発展基盤を整備する

−関西地区会員と懇談


危機を克服し、日本経済の発展基盤を整備する」をテーマに関西会員懇談会を大阪市において開催した。当日は今井会長、伊藤・樋口・熊谷・古川・辻・前田の各副会長が出席するとともに、関西地区会員約200名の参加を得て、種々意見交換を行なった。

  1. 関西地区会員発言
    1. ビジョンの明確化と過剰設備廃棄推進
      秋山喜久氏(関西電力社長)
    2. 大口電力需要からみると、関西の落ち込みは4〜5%も全国より大きい。その要因としては、関西に素材産業や中小企業が多いことがあげられる。
      景気悪化の最大の要因は、約40兆円と言われる需給ギャップにある。そのうち需要側は半分の20兆円、残りは供給側の過剰であるとみられる。産業設備年齢も日本は10.5年であり、1996年に米国を上回った。しかも、関西は全国より約2年長い。こうした設備は国際競争力の確保、消費者ニーズへの対応面から、更新しなければならない時期にきているが、契約電力からみると、設備更新はほとんど進んでいないと思われる。
      設備更新が進まない理由として、設備の除却損がでることと並んで、日本の経済ならびに産業構造がどうなるか、将来に対する見通しが持てないことがあげられよう。
      したがって、まず日本が将来どんな姿になるべきかを議論し、国民的な合意形成を図る必要がある。ブレア政権ぐらいの中道左派的なところを狙って、規制緩和や行政改革を進めたらどうか。こうした大きなビジョンを描いた上で、具体的な制度上の対策を立案してほしい。需要対策が強すぎると、企業が設備廃棄をやめてしまうし、供給力対策が強すぎるとデフレになる。政府においては、その難しい舵取りをうまく行なっていただきたい。

    3. 「住宅ローン利子所得控除制度」の導入とITSの早期実用化を望む
      上村圭一氏(大和ハウス工業会長)
    4. 住宅業界では、平成11年度の着工戸数を是が非でも130万戸の後半に届くよう努力していきたいと考えており、今後の住宅市場の本格的回復のために、来年度税制改正で導入が見送られた米国式の「住宅ローン利子所得控除制度」の導入を今後とも要望していきたい。同制度の導入によって、今後予想される住宅ローンの金利上昇分を軽減することが可能となり、消費者の購買意欲の増進につながるものと期待している。
      また、大阪オリンピックの開催は、わが国に閉塞感が漂うなか、若者に、誇りと夢と感動を与える「希望の灯火」と位置づけられる。関西では、「オリンピックにふさわしいまちづくり」という観点から都市型の社会資本整備として注目されているITS(高度交通情報システム)の早期導入に向けて、調査研究を行なっており、広域的な視点から経団連とも連携を図りながら進めていきたい。

    5. アジア諸国との関係強化に向けて
      室町鐘緒氏(三和銀行副頭取)
    6. アジア経済は、IMF等の支援策の効果が徐々に現れてきた。しかし、大幅なマイナス成長は避けられず、成長軌道に戻るには、今しばらくの間調整が必要と認識している。また、企業レベルでは、ドル債務を負っている企業・金融機関を中心に、資金繰りに窮するところが急増している。
      このアジア経済危機に対して、日本政府は大規模な支援策を打ち出しているが、日本企業もさまざまな苦難に直面しながらも、懸命に存続を図っている。
      また、邦銀は総じて、日本企業や将来その国の基幹産業となる地元の有力メーカーへの融資を行なっているため、不良債権は意外に小さい。邦銀の経営上の問題となることは考えにくく、アジア戦略は、中長期的には後退することはないと考えている。
      アジアにおける今後の課題ならびに展望としては、第1に、アジア危機は日本の危機である、第2に、日本企業にとっては絶好の進出機会であるということを認識する必要がある。高い貯蓄率、質の高い労働力、等の高成長要因は、今回の危機によっても損なわれず、アジアは5〜6%以上の潜在成長力を持つ。また、今こそ日本がアジアの自由化・構造改革を主導すべきであり、経団連のイニシアチブに期待したい。

    7. 地域の総合力と効率性の向上を目指す
      井手正敬氏(西日本旅客鉄道会長)
    8. 『関西広域連携協議会』は2府7県3政令都市と経済界が一体となって、行政単位を超えた広域的な課題の解決を図り、地域の「総合力と効率的な向上」を目的とする機関で、本年6月に発足する予定である。
      経済戦略会議の中間とりまとめでも、社会システムを「官主導・中央集権型」から「民主導・地方分権型」に転換することが提言されている。地域が連携することで、地方主権に向けて受け皿能力の向上も促され、意義も大きいと考えている。
      また、関西では、大阪湾ベイエリア開発、関西文化学術研究都市の整備、2008年夏季オリンピック招致など、「千客万来」の関西を目指して取組みを強化すべきテーマが多数あり、引き続き、経団連の支援をお願いしたい。

    9. 自由懇談
    10. 新宮康男氏(住友金属工業相談役・名誉会長)より「経済戦略会議や産業競争力会議において、21世紀における日本経済の姿、産業の進むべき海図を示してもらいたい」、松下正幸氏(松下電器産業副社長)より「APECの民間諮問会議のABACに日本側委員として参加している。本年も3回開催されるが、ご支援をお願いしたい」との発言があった。

  2. 経団連側発言
  3. 経団連側からは、今井会長の挨拶に続き、各副会長が、日本経済再生への課題、税制改革、社会保障制度改革、環境問題、地域開発の課題などの発言を行なった。
    最後に今井会長が、関西広域連携協議会に対する期待を述べるとともに、「今後とも関西と一体となって、わが国経済の回復に努力していきたい」と締めくくった。


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