経団連くりっぷ No.96 (1999年2月25日)

東海地方経済懇談会/2月9日

21世紀に向け新たな発展の基盤を確立する


経団連では、中部経済連合会(中経連)、東海商工会議所連合会と共催で、標記懇談会を名古屋市において開催した。当日は、東海側より、安部中経連会長をはじめ地元経済人約200名が、経団連からは、今井会長、那須・樋口・古川・辻・鈴木の各副会長が出席した。また、懇談会に先立ち、経団連側は「モノづくり」と「創造と研究の精神」の大切さを次の世代を担う若い人々に広く伝える目的で設立された「産業技術記念館」を訪問し、当地で育まれてきた織機や自動車技術の歩みを見学した。

  1. 開会挨拶
    安部浩平氏(中部経済連合会会長・中部電力会長)
  2. 21世紀初めまでに、日本経済の再生と構造改革を進め、わが国のさまざまな問題を総決算しなければならない。経済界も経済再生の担い手として萎縮することなく、積極的に経営体質と国際競争力の強化に努め、わが国経済の活力を高めていかなければならない。
    東海地域では、中部国際空港の建設や2005年日本国際博覧会の開催といったプロジェクトをはじめ、第2東名名神高速道路など、新たな発展基盤の整備が着実に進んでいる。首都機能移転の推進にも積極的な議論の盛り上げを図っている。これらプロジェクトにつき、経団連の支援・協力をお願いしたい。

  3. 東海側発言
    1. 東海経済の現状と今後の取組み
      佐伯 進氏(名古屋商工会議所副会頭・ノリタケカンパニーリミテド会長)
    2. 東海地域では自動車、工作機械、瓦、衛生機器、繊維とも業況は低調であり、大変厳しい状況に置かれている。早急に対策を立て、対処していかなければならない。それと同時に、中部国際空港、国際博覧会などのプロジェクトを機に、かつての進取の気性を取り戻し、高速道路交通システムや環境関連産業などの新規産業の育成を図っていきたい。また、東海地域では、国際的に誇り得る産業文化施設のネットワークによる「産業文化観光の振興」に努めており、観光交流の面でも地域の活性化に取り組んでいきたい。

    3. 首都機能移転と行財政改革
      小原敏人氏(中部経済連合会副会長・日本ガイシ会長)
    4. 中央省庁再編の目的は、各省庁の縦割り行政、裁量行政を改め、肥大化した政府の役割を見直し、機構、人員双方の徹底的なスリム化を図ることにある。そのために、定数削減、規制緩和、地方分権、独立行政法人化を進め、透明、簡素で小さな政府を作っていくことが必要である。グローバルな大競争時代を迎え、地方分権の確立は不可欠であるが、権限のみならず財源の委譲が必要である。
      これら改革を推進し、中央省庁の業務に抜本的にメスを入れるためにも首都機能移転は不可欠である。新都市建設から国会開設までの10年間でかかる公的負担は2兆3,000億円程度(1年当たりでは2,000〜3,000億円程度)であり、財政問題はネックではない。中央地域は人口の重心地が存在し、日本列島の各地域との交流連携が最も容易であることなどから、新都市移転の適地である。

    5. 2005年日本国際博覧会と地域活性化
      加藤庄右氏(瀬戸商工会議所会頭・瀬戸信用金庫会長)
    6. 瀬戸市で開催する2005年日本国際博覧会は、「新しい地球創造:自然の叡智」をテーマとし、環境、資源・エネルギーをはじめとする21世紀に向けた人類共通の課題を考える機会を提供する問題提起型の博覧会である。長期的な地域づくりと一体となって、環境と共生したまちづくりや人と自然の新たな関係について、世界中の知恵を集めた実験場を目指しており、その成果を全国・全世界に発信していきたい。あわせて市民レベルの多面的な交流を展開して、皆が楽しめる博覧会を創っていきたい。

    7. 中部国際空港の建設促進
      豊田芳年氏(中部経済連合会副会長・豊田自動織機製作所会長)
    8. 昨年5月、経団連の協力を得て中部国際空港株式会社が設立された。政府補正予算でも増資が行なわれ98年度末には資本金が84億8,600万円となった。会社は資本金の50%が民間出資であり、会長、社長が民間出身、社員も民間出身者が3分の1を占めており、民間の力が発揮しやすい体制で建設・運営に臨む。21世紀にふさわしい、成田・関西と並ぶ国際ハブ空港づくりに努めたい。
      また、空港の機能を最大限に発揮させるため、新空港への連絡鉄道の事業主体を地元自治体、経済界で設立すべく取り組んでいる。道路も、知多横断道路、西知多道路の整備が進められている。その他広域アクセス等についても着実に進めることが必要である。

  4. 経団連側発言
  5. 樋口副会長は「経済戦略会議に寄せられる国民の声は、経済再生に期待する熱意のあるものばかり。戦略会議の提言を法案等の形で出せないか検討している」と説明、那須副会長は「新産業の創出やベンチャーの育成に向け、東海地域が牽引役となってほしい」、鈴木副会長は「過去の成功体験は、必ずしも現在には通用しない。消費者ひとりひとりの心理にまで踏み込んでニーズを捉えるべきであり、規制のあり方も変えていくべき」、辻副会長は「経団連環境自主行動計画を着実に実行し、企業の自主的取り組みの効果や成果を大いにアピールしたい」と訴えた。古川副会長は「2005年日本国際博覧会、中部国際空港は日本の閉塞感を打破する21世紀への架け橋プロジェクトになる」と評価した。
    最後に今井会長が「経済界も経済再生の担い手として国際競争力の強化に努めるべきであるとの安部会長の言葉に賛同する」と締めくくった。


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