経団連くりっぷ No.96 (1999年2月25日)

ベイン ブリティッシュ・インビジブルズ委員長との懇談会(座長 太田参与)/1月26日

次期ラウンドに向け、欧州サービス産業界はネットワークを強化
−WTO次期貿易自由化交渉に向けた欧州の取組み


英国の金融業を中心とするサービス産業団体であるブリティッシュ・インビジブルズのベイン・サービス貿易自由化委員長より、WTOの金融サービス交渉への欧米の金融業界の取組み、2000年からの次期サービス交渉に向けた欧州サービス産業界の連携の動き等について説明を聞いた。

  1. 金融サービス交渉への対応
    1. 米国の交渉離脱により中断されていたWTOの金融サービス交渉は97年に再開された。同交渉を成功させるには、民間からの強い働きかけが重要であった。そこで、米・英の金融機関のトップが中心となり、これに、カナダ、スイス、日本、香港の金融業界の代表も関わる形で、ファイナンシャル・リーダーズ・グループ(FLG)が組織された。

    2. FLGは、

      1. 同交渉の課題およびエマージング市場でのビジネス上の障害のリストを政府に提出、
      2. メンバーが社用で出張する際、海外のカウンターパートに対して交渉の重要性を説明、
      3. 各国政府に対する共同ブリーフィング、
      等を行なった。こうした活動が実を結び、金融サービス交渉は97年12月に妥結した。現在は本合意が予定通り本年3月1日に発効するよう批准状況を注視している。

  2. ヨーロピアン・サービス・ネットワーク(ESN)の設立と活動
    1. 欧州委員会のブリタン副委員長からの示唆を受け、ブリティッシュ・インビジブルズ等が中心となり、ESNが本年1月26日に設立された。ESNは、50名程度のサービス関連企業(金融、輸送、通信、法務、出版等)のCEOまたは会長からなる「リーダーズ・グループ」、これに23の業界団体を加えた政策委員会から構成される。現在、メンバーはポルトガルを除く全EU加盟国を網羅している。

    2. ESNは、WTOの次期サービス交渉において、より開放的で競争促進的なサービス市場の実現に寄与するような内容の合意が得られるよう、欧州委員会等に働きかけることを主たる目的としている。具体的には、

      1. 次期ラウンドを包括的なものとし、3年以内に成果を出す、
      2. サービス交渉はできるかぎり広範で野心的な内容を目指す、
      3. 自由化交渉を通じ、内国民待遇の確保や例外の制限等を実現する、
      4. 補助金、セーフガードなど各分野に共通なルールの策定を行なう、
      5. WTOを梃子に、欧州のサービスの自由化、市場開放を進める、
      6. 自由化の利益を明らかにし、政治的支持・一般の支援を得る、
      といった基本方針を打ち出している。

    3. 本年11月のWTO閣僚会議を念頭に、4月半ばを目途に意見をとりまとめていく予定である。


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