経団連くりっぷ No.97 (1999年3月11日)

なびげーたー

長期的視野に立ってロシア極東との協力促進を

国際本部副本部長 江部 進


日ロ経済委員会(委員長:安西邦夫 東京ガス社長)では、去る2月19日に札幌で第6回日ロ極東経済協力ワークショップを開催し、ガスパイプラインの建設など6案件の実現に向け検討を継続することを決めた。

ワークショップは、当委員会極東部会(部会長:上島重二 三井物産社長)とロシア極東日本経済委員会(委員長:ファルフトジーノフ・サハリン州知事)が97年3月にユジノサハリンスクで開いた第1回日ロ極東経済会議の決定に基づき設置されたもので、97年10月にハバロフスクで第1回会合を開催、爾来、ロシア極東地域との経済協力を促進するための方策を検討してきた。具体的には、極東地域での共同プロジェクトの選定と、実現していく上での問題点の把握と対応策の検討である。共同プロジェクトは、

  1. 日ロ両国政府等の支持が得られるもの、
  2. 極東の経済発展・民生の向上に資するもの、
  3. 日ロ経済関係(貿易、投資)の発展に資するもの、
という考え方をベースに選定することとした。

極東の各州・共和国から優先案件が80件程提示され、その中からサハリン、カムチャトカ、ハバロフスクの3州とサハ(ヤクート)共和国のガスパイプライン建設(一部ガス田開発含む)、アムール州の水力発電所および沿海州の複合非鉄金属処理基地の建設の6件が最優先候補案件として選定された。6案件については、1月下旬に各州・共和国の行政府・関係企業代表の来日を得て、日ロ経済委員会の会員企業がプロジェクトの説明を聞き、幹事会社を中心に評価を行なった。

ガスパイプラインの建設は、地場の天然ガスを利用して発電所や民生用の燃料を石炭や重油からガスに切替え、燃料・エネルギー供給の効率化・安定化を狙いとするもので、CO2の削減にも資する。水力発電所は極東南部地域への電力供給を目的とするもので、極東のエネルギー事情を改善するとともに、環境保全に資する。複合非鉄金属処理基地は主要な鉱業所が集中する地区に建設され、選鉱、精練などを一括担う。先行きハバロフスクやマガダンの鉱石の処理も視野に入れている。これは日本の設備を導入することによって鉱石処理の効率化、環境保全の改善に役立ち、またわが国の非鉄金属の供給元の多角化に繋がる。冒頭の札幌会合では、この6案件の実現に向けた検討作業を継続することで日ロ双方が最終的に確認したのである。

昨年11月のモスクワにおける日ロ首脳会談の結果を踏まえ、両首脳は「日ロ間の創造的パートナーシップに関するモスクワ宣言」に署名した。この中で、貿易・経済分野については、両国の協力のさらなる強化が双方の利益に合致することを確認するとともに、この分野の協力を長期的視点に立ち一層発展させる決意を表明した。この6案件の実現に向けての作業はこれに適うもので、わが国政府はこの調査作業に資金協力を行なっている。


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