経団連くりっぷ No.97 (1999年3月11日)

OECD諮問委員会(委員長 河村健太郎氏) /2月16日

具体的成果を求められるOECD

−野上OECD大使との懇談会を開催


在欧州諸国大使会議に出席するため一時帰国したOECD日本政府代表部の野上大使を迎えて、最近のOECDの活動状況と今後の重要課題について説明を聞くとともに種々懇談した。野上大使は、OECDは本来の役割である先進国間の意見調整にとどまらず、具体的な成果を示す必要に迫られていると述べ、マクロ経済政策、多国間投資協定、規制制度改革、コーポレート・ガバナンスなどに関する活動状況を説明した。

  1. 変化するOECD
  2. OECDを取り巻く関係者として、従来の産業界(BIAC)、労働組合(TUAC)に加えて最近「市民社会」が存在感を増し、状況を複雑にしている。また東南アジア、ロシア、ブラジル等の非加盟国の経済危機が加盟国の経済に大きな影響を与えたことから、非加盟国を活動に取り込む必要にも迫られている。本年5月の閣僚理事会に初めて主要非加盟国を招待すべく検討している。
    OECDの本来の役割は、先進国間の意見調整であったが、分担金の支出を各国に認めさせるためにも、具体的な成果を生み出すことが不可欠となってきている。

  3. 最近の主な活動
    1. マクロ経済
      昨年5月のOECD閣僚理事会では、日本のマクロ経済運営に対する風当たりが強く、コミュニケの記述をめぐり大変な交渉を余儀なくされた。その後、減税、金融部門の再建などの具体策が講じられたことから、本年は諸外国の日本を見る目も違ってくると思われる。他方、米国経済はきわめて良好であるだけに、下降に向かった場合の谷の深さが懸念される。欧州経済は、マーストリヒト条約による財政赤字とインフレ率の制約の下で、財政政策と金融政策のせめぎ合いが懸念される。

    2. 多国間投資協定(MAI)
      昨年12月のMAI交渉の実質的破綻は、グローバリゼーションで被害を被るセクターもあるという、各国に内在する認識を、政治が利用した典型例ということができる。この認識がある限り、交渉の場をWTO等に移しても、状況は同じであろう。

    3. 規制制度改革
      現在、日本、米国、メキシコ、オランダの4カ国について規制制度改革の進捗状況をレビューしており、春に報告書が出される予定である。日本に対してはかなり辛口の原案が作成されており、担当省庁の反発が大きいが、これこそがOECDのピア・レビューの特性といえる。

    4. コーポレート・ガバナンス
      コーポレート・ガバナンスの基礎的なガイドラインを作成し、非加盟国にも広げていくことを考えている。「ステークホルダーズ」の概念が欧米では日本より広いことに留意する必要がある。


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