経団連くりっぷ No.97 (1999年3月11日)

貿易投資委員会(委員長 北岡 隆氏)/2月22日

着々と進むWTO次期自由化交渉に向けた準備


貿易投資委員会では、在ジュネーブ国際機関日本政府代表部の赤尾大使より、ジュネーブにおけるWTO次期自由化交渉に向けた準備状況や課題、各国の立場等について聞くとともに懇談した。

  1. WTOの特徴
  2. WTOは、ルールを基本とする(“rule based”)国際機関であり、確立された紛争解決制度により合意内容の実施が確保できるため、環境、労働等を含めさまざまな分野の議論がWTOに持ち込まれる傾向がある。

  3. 次期交渉に向けた準備状況
    1. 本年11月30日からの第3回閣僚会議において、WTOの次期自由化交渉の範囲、内容、期間等が決定される。

    2. 日欧は、すでに交渉開始が決まっている農業、サービス分野の自由化交渉のみならず、より包括的な交渉の実施を主張しており、香港、韓国等がこれを支持している。米国は来年1月の一般教書において「新ラウンド」という言葉を初めて使うなど、日欧の立場に近づいてきている。ただし、米国がカナダとともに提案している早期収穫方式(一部でも合意できた分野から実施に移す)には、日本として反対していくつもりである。日欧は一括受諾方式を志向している。他方、途上国は、全体として新たな自由化交渉には消極的であるが、農業や繊維分野の自由化に関心を持つ国もある。

    3. 日本は、鉱工業品の関税引下げや投資ルールの策定を重視している。
      農業については、コメの関税化によりWTO整合的なルールとなった。すでに、昨年12月にWTO事務局に通報し、国内的な法整備も進めている。
      鉱工業品の関税引下げについては、すべての高関税率品の税率を一律1桁にまで削減する、あるいはすべての関税を50%引下げる(フォーミュラ・カット)等を提案する方向である。
      また、米国の反ダンピング措置の利用を懸念している。現状ではWTOの紛争解決制度による対応に限界があるため、引き続きWTOのアンチ・ダンピング協定による規律強化を主張していきたい。

  4. 紛争解決(DS)制度
    1. WTOではDS制度の機能が強化された。現在、米欧間の「バナナ案件」が大きな議論となっている。欧州がDS結果に基づく義務を履行しないことは問題だが、これに対し、通商法301条に基づく一方的措置を発動しようとする米国も問題である。

    2. 日本はWTO設立後、インドネシアの自動車、米国マサチューセッツ州の政府調達、カナダのオートパクトなどの案件につき提訴している。


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