経団連くりっぷ No.97 (1999年3月11日)

防衛生産委員会総合部会(座長 永松防衛生産委員会事務局長)/2月24日

日米安全保障上の課題について
クレーマー米国国防次官補と懇談


米国国防省のフランクリン・クレーマー国防次官補(安全保障問題担当)が日本の防衛関係者との意見交換のために来日した機会に、防衛生産委員会では、同次官補一行を招き、日米安全保障をめぐる課題について懇談した。クレーマー次官補の説明概要は以下の通り。

  1. 米国の安全保障と弾道ミサイル防衛
  2. 昨年8月の北朝鮮によるテポドンミサイル発射を機に、日本でも安全保障への関心が高まっているが、米国でもこの事件には強い反応が現れた。クリントン大統領は、米国に対する弾道ミサイルの脅威が明白になったことを踏まえ、国家ミサイル防衛構想(NMD)の早期実現に向け、必要な研究開発に政府として前向きに取り組み、技術的な評価を踏まえた配備の判断を2000年に行なう方針を明らかにした。
    また、海外に駐留する米軍や日本等の同盟国を弾道ミサイルの攻撃から守る戦域ミサイル防衛(TMD)の研究開発を推進しており、日本が米国との共同技術研究への参加を決定したことを歓迎したい。

  3. 東アジアの安全保障と日米協力
  4. 昨年11月に米国国防省が公表した「東アジア戦略報告」は、朝鮮半島と中国での変化の有無にかかわらず、米軍が東アジア地域に長期的に駐留することを明らかにし、同地域の安全保障の要は、日米間で安全保障に関する健全な協力・協調関係を維持・強化することであることを強調している。最近、韓国、オーストラリア、東南アジアの防衛関係者と懇談したが、在日米軍の駐留と日米間の協力体制の継続を重視し、日米防衛協力のための指針(ガイドライン)関連法制の整備についても、前向きに見ている。東アジアの安全保障のためには、沖縄に米軍が駐留し続けることが重要であり、普天間基地の返還など「沖縄に関する特別行動委員会(SACO)」の最終報告の着実な実施が不可欠である。米国は、引き続き東アジアにおける安全保障に、日米安保を軸として、長期的な視点を持って積極的に取り組んでいく。

  5. 日米防衛産業協力の重要性
  6. 防衛予算が縮減される傾向にある中、各国とも防衛装備調達の効率化、合理化、重点化が課題となっている。米国では、防衛産業の再編統合がかなり進み、企業レベルでの効率化が実現しつつある。欧州でも、企業の合従連衡が始まっている。
    しかし、国際的な協力を進める上では、各国とも国内の防衛産業のシェアを維持し、ハイテク分野の技術の移動をコントロールしたいといったさまざまな制約がある。装備調達の効率化には日米の防衛産業間の連携・協力が重要であるが、このような制約を理解しつつ推進していく必要がある。日米の防衛産業間の協力の枠組みを検討する場として経団連防衛生産委員会と米国の防衛産業界が2年前に確立した日米安全保障産業フォーラム(IFSEC)の活動は有益である。


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