経団連くりっぷ No.98 (1999年3月25日)

第559回常任理事会/3月2日

資本増強による金融システム再生の基礎づくり


大手行の資本増強を3月末に控え、常任理事会では、柳沢金融再生委員会委員長より金融再生の現状について聞いた。

  1. 資本増強について
    1. 各行からの正式申請を受け、3月12日に正式承認、その後、取締役会を開いていただいた上で、3月30日に払い込み、翌31日に資本増強ということになる。

    2. 不良債権問題は、今回の資本増強により必ず解決できると考えている。その理由としては、第1に、一斉銀行検査に基づく厳格な資産査定が行なわれていることがある。また、引当についても、これまで銀行と公認会計士との間の話し合いで決めていたが、今回は米国並みの引当率を決めた。第2に、連結決算に移行することによって、いわゆる「飛ばし」の問題は自動的に解決される。第3に、有価証券の含み損については、少なくともその額に見合った資本金が準備される。第4に、不良債権はバランスシートから切り離さないと問題は解決しないが、最近、債権をバルクで売却する動きが目立ってきていることがある。こうした実質処理を行なえば、配当率、金利等資本増強の条件が優遇されるシステムになっている。今後、不動産の権利調整のための法律ができれば、実質処理が一層進むことになる。

    3. BIS規制のために各行は資産の圧縮を迫られていたが、資本増強により自己資本比率が概ね2桁になるので、この面ではかなり制約が緩和される。各行には、外債発行時の目論見書と同様の細部にわたる経営健全化計画を提出していただく。注入した資本の残高がある限り、その期間は同計画に基づき健全化が求められることになる。また、中小企業等への貸出計画も記述することになっているので、貸出残高増につながることを期待している。

    4. リストラについては、経営健全化計画のうち、役員、従業員など22項目について、採点し、その結果が配当率、金利等資本増強の条件に反映されるようになっている。

    5. 今回の資本増強の意義は、金融システム再生の基礎づくりにあると考えている。今後、金融機関の再編は免れない。その背景の第1は、ビッグバン、第2は、厳しい景況による優勝劣敗である。金融再生委員会としては、専門チームによるモニタリングをしっかり行なっていく。また、とかく優先株などは市場で不正に操作される傾向にあるので、これらにきちんと対処して、みだりに株価が下がらないようにしたい。

  2. 破綻行の処理について
  3. 破綻行の処理については、フィナンシャル・アドバイザーを活用し、透明性を確保しながら進めることとしている。


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