経団連くりっぷ No.98 (1999年3月25日)

新入会員代表者との懇談会(司会 内田事務総長)/2月25日

新入会員代表者より当会に対する率直な意見・要望を聞く


経団連では、新規に入会した会員の代表者から、経団連に対する意見や各企業・業界が抱えている課題等を聞き、活動に反映させている。当日は新入会員代表者7名および今井会長、内田事務総長ほか事務局役員5名が出席し、率直な意見交換を行なった。

新入会員代表者発言要旨

  1. 日鉱金属 坂本 卓 社長
  2. 非鉄業界も素材産業の例にもれず、極めて厳しい環境下におかれている。主力製品である銅は、世界的な供給過剰に伴い国際価格が暴落し、国内価格も戦後最低の水準に落ち込んでいる。銅はこれまで国内需要に生産が追いつかない状態だったが、今年度は初めて供給過剰に陥った。国内需要はすでに成熟段階に入っており、今後は潜在的に成長力の高い東アジアへの事業展開に活路を見出すべく、国際競争力の強化に力を入れている。わが国製造業の高コスト構造は、税制改革や規制緩和の進展により是正の方向に進んでいるが、他方、高い技術力が必ずしも収益力の向上に結びつかない面があり、改善の余地が残されている。
    製造業にとって、為替の変動は影響が大きく、安定化を望む。

  3. メイテック 大槻三男 社長
  4. 当社は機械設計、電気設計、装置設計等の分野で技術者の派遣業務を行なっており、技術者をグループ単位で派遣し、事業の一角を担うエンジニアリング・アウトソーシングに特化した事業を展開している。派遣事業は現在、規制により26の業種に職務が限定されているが、規制の撤廃・緩和を推進することにより、あらゆる分野で派遣業務が可能となれば、有能な人材をさらに有効活用することができ、わが国の将来にとって大変有益であると考える。

  5. テネコ オートモティブ ジャパン 宍倉二郎 社長
  6. 当社は、米国を本拠とする多国籍企業テネコ社の日本法人で、自動車部品の販売を担当しており、日本に進出して25年になる。
    1995年の日米自動車・部品協議により、規制緩和が行なわれ、ビジネス環境はかなり好転した。規制緩和のねらいは、一般の消費者の利益向上であり、規制緩和のメリットをより早く消費者・生活者に知らしめることが重要だ。
    東南アジアや南米経済の減速等により、欧米企業は国際戦略の再構築に取り組んでおり、あらためて日本が有力なパートナーとして浮上している。今後はますます、欧米企業との間で、M&Aや合弁が進むと思われる。

  7. 日本BT 北里光司郎 会長
  8. 当社は、英国の通信会社ブリティシュ・テレコム(BT)の日本法人で、1985年に日本に進出し、昨年7月には、第一種電気通信事業者の認可を得た。
    英国では最大の通信事業者であるBTに対し、料金面等でさまざまな規制を設け、新規参入者の事業を奨励する環境を整えている。日本の場合は巨大事業者も新規参入者も同じ条件で競う状況で、新規事業者が育ちにくい。
    接続料の問題も改善しつつあるが、さらにスピードと透明性を向上させる事が必要だ。
    通信業界では、現在、世界的な規模で提携や買収が行なわれているが、日本と欧米ではコーポレートガナバンスに関する考え方が異なり、ビジネスを共同で展開していく際の課題になっている。経営の構造もグローバルスタンダードに近づけていく必要があると思われる。

  9. アデランス 根本信男 会長
  10. アデランスの社名は、フランス語との造語で“つける”という意味を込めている。毛髪商品専業では、当社と子会社のフォンテーヌだけが、世界で唯一の上場企業である。米国、欧州、台湾にも直営店を出している。限りなく自然に近い商品が求められており、当社は独自開発の素材をもとに商品を製造している。
    特に、女性用の販売は、消費税導入の際に売上が大きく落ち、税率が5%に引き上げられた際にもかなりの影響を受けた。反面、台湾は税率が7%と高いにも拘わらず、内税方式のため現在でも顧客の購買意欲が衰えていない。消費税の内税化など、消費者心理を汲み取った税制の改革を望む。

  11. トリンプ・インターナショナル・ジャパン 吉越浩一郎 社長
  12. 当社は、世界最大の女性用肌着メーカー、トリンプ社の日本法人である。肌着市場は全体的には成長が鈍化しているが、女性用は不況下にあっても市場を拡大している。
    海外では、輸入割当制などの障害に出会う事もあるが、日本においてはまったく規制のない自由競争の状態にあり、ビジネス環境に恵まれている。
    取引先約1,000社と電子取引(EDI)を行なっているが、日本では取引先毎にシステムの構築が必要で、巨額の投資を余儀なくされている。米国のように仕様を標準化できれば、その分、製品開発や販売促進に力を振り向けることができ、日本経済にとってもプラスになる。

  13. 電気通信協会 前田光治 会長
  14. 当協会は、通信事業者、機材・線材メーカー、設備工事会社、放送事業者等の法人会員と個人会員で構成されており、電気通信事業全般の振興をはかる目的で活動している。専門図書の発刊、国内外の調査、関係企業間の情報交流・意見交換の為のセミナー活動、途上国への知的援助等を中心とした事業を行なっている。電気通信事業者の世界的な合従連衡が進行中であり、技術の進歩も急速な事から、時代の変化に即した活動の迅速化が要請されている。


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