経団連くりっぷ No.98 (1999年3月25日)

中南米地域委員会/2月25日

キューバ経済の発展に外資は不可欠

−ロバイナー・キューバ外務大臣との懇談会を開催


中南米地域委員会では日本・キューバ経済懇話会との共催により、来日したキューバのロバイナー外務大臣との懇談会を開催した。大臣はキューバが自国経済の発展のために積極的な外資の導入政策をとっていることを説明した上で、今後の日本からの活発な投資を期待している旨強調した。

  1. ロバイナー外務大臣説明要旨
    1. 多面的外交の展開
    2. キューバは国際社会からの孤立を望んでおらず、多面的な外交政策を展開している。現在167カ国と外交関係を結んでいる。
      経済面で、キューバは計画経済の枠を守りながら、企業の独立採算制を進める等、フレキシブルに対応している。89年まではキューバの対外貿易は国営公団が独占していたが、今日では500社以上の企業が貿易に従事している。貿易相手は110カ国、3,000社に及ぶ。また600社の外国企業がキューバに支店、事務所を開設している。

    3. 安定的な経済環境
    4. 98年のGDP成長率は1.2%であったが、過去3年間の平均では3.8%を記録している。砂糖を除くすべての分野、具体的にはニッケル、たばこ、医薬品、養殖魚・伊勢海老等の海産物、観光、石油などの分野が成長している。
      財政健全化政策により、財政赤字も大幅に削減された。94年には所得税などの創設、中央省庁の縮小を行なう一方、企業の自治権を拡大した。400の国営企業は4,000の協同組合に移行したが、これはより自主的な活動や生産効率の向上をねらったものである。4年前には国が農耕地の75%を運営していたが、現在は33%に低下している。自営業者も増え、その規模は120業種、17万人に上る。

    5. 外資の重要性
    6. 98年はキューバに初めて外国企業とのジョイントベンチャー(J/V)ができてから10年目にあたる。自国経済を管理できないとどれだけの弊害があるかは、1902年から59年までの経験で実証済みである。そこで、投資環境を管理すべく、95年に外国投資法を制定した。これにより海外の先進技術をJ/Vを通じて取り入れ、産業の近代化、生産効率の向上、雇用の創出、製品・サービスの質的向上、生産コストの削減、国際競争力の強化を実現していく。
      国家発展のための戦略のなかで、外資の果たす役割は重要であり、政府は各種の便宜供与を行なっている。利益の本国への送金も認められる。またJ/Vにおいては、契約期間が終了し、投資コストを回収できた後は、資本の引き揚げも自由である。原則としてすべての分野への投資が可能となっているが、保健医療、教育、軍事施設の分野への外国からの投資は認められない。
      キューバには民営化のプロセスは存在せず、J/Vの形でキューバ政府が出資する。現在350のJ/V企業が活動しており、その相手国は40カ国以上で、うち3分の2がカナダ、イタリア、スペイン、フランス、オランダ、英国の企業で占められている。分野としては石油探索、ニッケルを始めとする鉱業、観光、輸送、情報、不動産などがあげられる。J/Vのような経済的な提携のうち、半分以上は最近3年間で成立したものである。150社は米国のヘルムズ・バートン法制定以降にキューバへ進出したものであることから、外国投資法がいかに積極的な役割を果たしたかが解る。
      キューバ政府は、これまで投資を行なう企業の立場を考えて慎重に話し合いを進めてきた。外国企業が宣伝活動なしに静かに入ってくる国はキューバのみである。キューバにあるほとんどの外国企業の支店にはネオンサインがない。またキューバへの入国ビザは、パスポートとは別紙の形で発行される。これも世界で数少ない例である。パスポートにキューバへ入国したことが記録されていると米国に入国しにくくなるためであり、キューバへ来る企業家を守るためにこうした措置を取っている。
      外国投資はさらに新たな分野へも拡大しており、その役割は今後ますます増加していく。もちろん門戸は日本の投資家にも開かれている。

  2. 質疑応答
  3. 経団連側:
    キューバと米国の関係は改善しているのか。
    ロバイナー大臣:
    米国との関係は一向に改善していない。むしろ経済封鎖はさらに強化されているのが現実である。先に発表された米国の対キューバ政策見直しについては、「キューバに対する経済制裁の緩和」と報じられているが、実際には緩和されていない。例えば昨年、米国はキューバに対する医薬品の輸出を許可したが、現在まで1錠のアスピリンも輸出されていない。緩和政策を発表する一方で別の措置を強化しているため、結果的に実現されていない。

    経団連側:
    日本企業がキューバでのビジネスを検討する場合に必要な情報を提供してほしい。制度上の外国投資法については理解しているものの、投資にかかるコスト、例えば労働者賃金や土地の値段といった情報は現在公表されていない。
    ロバイナー大臣:
    重要な要望であり、今後さらなる情報交換を行なっていきたい。

    経団連側:
    民間債務の問題については、リスケ交渉がまとまったものの、金利の一部の支払いを受けただけであるので債権額は増える一方である。そこで債権額の一部を投資に振り替えてはどうか。例えば、キューバが重視している観光業において、日本人経営のホテルを日本とキューバによるJ/Vでつくれば、日本人観光客を増やすことができると思われる。
    ロバイナー大臣:
    債務問題については、キューバは日本に対してのみ債務をかかえている訳ではないので、今後大いに話し合って最善の解決方法を見つけていきたい。今回、キューバにおける観光関係の専門家も一緒に来日しているので、具体案を出していただければ双方にとって受入可能な解決方法を見つけられると思う。


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