経団連くりっぷ No.98 (1999年3月25日)

産業技術委員会政策部会(部会長 武田康嗣氏)/3月1日

21世紀の新技術・新市場調査について


経団連では、昨年11月にとりまとめた提言「戦略的な産業技術政策の確立に向けて」において、将来のリーディング産業となる事業分野を中心に、産業技術関連施策を集中的に講じるべきと主張した。産業技術委員会では、提言をフォローアップする観点から有望事業分野における技術的課題、必要となる施策について調査を進めているが、今般、その一環として、三菱総合研究所の杉野昇上席研究理事を招き、21世紀の新技術・新市場調査について説明を聞いた。以下は、その説明の概要である。

  1. 21世紀の新技術・新市場調査概要
    1. 昨年4月に日経産業新聞で連載された技術シーズに関する記事で、バイオテクノロジー、微細(材料)、知、光、環境、通信が世間の注目を浴びた。これを踏まえ、三菱総合研究所は日本経済新聞社と共同で、21世紀の産業発展を支える技術(200項目)とそれらの技術が創り出す市場規模に関する調査を実施し、昨年10月に調査結果(356社が回答・回収率約41%)を公表した。

    2. 2000年〜2020年の市場成長率は、環境・エネルギー分野が世界(2000年の9.2倍)、日本(同6.4倍)ともに最も高く、その次はデバイス・素材分野で世界(同6.0倍)、日本(同6.4倍)であった。
      2020年の市場規模は、分野別でみると情報通信・エレクトロニクス分野が世界(542兆円)、日本(141兆円)ともに最も大きく、項目別では、携帯データ通信サービスが世界(75兆円)、日本(20.3兆円)ともに最も大きかった。
      また日本の国際競争力については、超薄型モニター、MD機器、光磁気ディスク等情報・通信、エレクトロニクス等のハード技術で強く、遺伝子治療(薬)、バイオ農薬等のバイオテクノロジー、ネットワークサービス等個人のアイデアに左右される分野が弱いという結果であった。

  2. 戦略的な産業技術政策のポイント
  3. 今後、戦略的な産業技術政策を展開する際のポイントは、将来どのような新技術・新市場が生まれるかである。これまでは1970年代のメカトロニクス革命(日本が優位)、90年代の情報ネットワーク技術の社会への導入(米国が優位)という流れであった。
    今後、21世紀をリード産業としては、最終財の生産をサポートする産業(日本が得意)、インテグレーション型産業(米国が得意)、教育・交通・医療・住宅等のソシオ型(社会インフラ型)産業であると考えられる。これらの産業の育成に向け、日本としては、新技術と従来技術との組合せ、官民の役割分担、市場ニーズと技術シーズ等のバランスを考慮し、政策を展開する必要がある。


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