経団連くりっぷ No.99 (1999年4月8日)

なびげーたー

規制緩和は内容のある「各論」の積み上げが勝負

常務理事 立花 宏


規制緩和計画では「総論」に掲げた取組み方針をどう個別具体的な「各論」に徹底していくかである。規制緩和は「各論」の積み上げが勝負となる。

「規制緩和推進3ヵ年計画」(以下「計画」)の第1回目の改定が去る3月30日に閣議決定された。「計画」は、規制緩和の目的や横断的な見直しの方針等の「総論」部分と、個別具体的な規制緩和事項(合計917項目)の「各論」部分で構成されている。

「総論」部分の見直し方針を見ると、例えば、事業参入規制の見直しでは、「法人の形態によっては参入が制限されていた分野について、営利法人等の参入を原則自由・例外禁止の方向に向けた検討を進める」との方針が今回新たに追加された。これは医療・福祉、農業の分野、あるいは民法第34条に基づき設立された公益法人のみに認められていた検査・検定等の分野に、営利法人の参入を認めようとするものと説明されている。官民の役割分担や民間活力導入の観点から、あるいは新規事業分野での雇用創出等の観点から、これらの規制緩和の方針は高く評価できる。問題は、その方針が個別具体的な分野で徹底されるかであり、関係者の苦労もその点にある。

医療・福祉分野の規制緩和事項を見てみよう。まず、認可保育園の設置主体として民間企業の参入を認めることについては、「10年度に検討を行い、11年度早期に結論を得る」とされており、結論の時期を明示したことは評価できる。しかし、特別養護老人ホームへの民間企業の参入については、様々な前提条件を並べた上で「11年度以降(検討)」とされているのみであり、企業による病院経営についても、「引き続き検討を進める」とされているだけで結論の時期さえ明示されていない。

農業分野への民間企業の参入については、極めて限定的に認められるだけであり、また、検査・検定分野での34条法人限定解除の検討についても、個別具体的には小型ボイラー等の検査等いくつかの分野を記載するにとどまっている。

「計画」では、これ以外の見直し方針として、同種類似と判断される行政分野では可能な限り最も低い規制レベルに他の分野の規制を整合させること(いわゆるトップ・ランナー方針)、あるいは、業務独占規定等の資格制度の在り方や基準認証等については一定の指針に基づき全体的に見直すよう指摘している。

これらの方針に強制力がない以上、この原則を個別分野において徹底させ、「総論」として打ち出した取組み方針を個別具体的な「各論」に落とし込んでいくプロセスが不可欠となる。「わが省、わが業界のこの分野は特別だ」といった「各論反対」の声をどう克服していくか、会員各位の知識・経験を活用させていただき、引き続き「計画」の拡充を働きかけていきたい。


くりっぷ No.99 目次日本語のホームページ