経団連くりっぷ No.99 (1999年4月8日)

日本メキシコ経済委員会(委員長 川本信彦氏)/3月24日

双方に利益をもたらす貿易・投資協定の締結を


来日したメキシコのブランコ商務・工業振興大臣を迎え、今後の日墨経済関係をめぐり意見交換を行なった。ブランコ大臣は、メキシコ経済の安定性を強調するとともに、メキシコが米州諸国および欧州連合(EU)との間に築きつつある自由貿易協定ネットワークについて説明し、日本との間にも第一段階として投資保護協定を締結したいとの意向を表明した。

  1. 安定したメキシコ経済
  2. 98年のメキシコ経済は、石油価格の下落、世界的な金融不安等の困難な状況にもかかわらず、緊縮的な財政政策とインフレ抑制的な金融政策によって危機を回避し、4.8%の成長を遂げた。99年は財政赤字の対GDP比1.25%、経済成長率3%、インフレ率13%台を目標としている。インフレ率の下降傾向、予想以上に好調な米国経済、国内外企業による活発な投資計画などを見ると、これらの目標は十分達成可能と思われる。さらに2000年には、新政権への円滑な移行を保証するため、財政赤字の対GDP比1%、経済成長率5%、インフレ率10%を目指す。

  3. 自由貿易協定ネットワーク
  4. 北米自由貿易協定(NAFTA)締結以降、メキシコから米国への輸出が倍増し、対内直接投資も5年間で累積570億ドルに達した。日系企業のメキシコへの投資も増加し、日墨関係の緊密化に貢献している。
    またメキシコは既に中南米の6カ国とも自由貿易協定を締結しており、99年末までにパナマ、ホンジュラス、エルサルバドル、グアテマラとも締結する予定である。これらが実現すれば、米州13カ国の間に自由貿易協定のネットワークができあがる。
    現在最も重要なのは、欧州連合(EU)との自由貿易協定に向けた交渉である。4月の第4回会合で知的財産権、政府調達、競争政策、工業製品・農産品の関税撤廃について話し合う予定である。99年末までに交渉を妥結できると確信している。

  5. 第一段階は投資保護協定から
  6. マキラドーラの日系企業にとって、2001年以降のマキラドーラ制度の変更は重要な問題である。メキシコ政府は2000年11月1日から新たな生産振興プログラムを導入し、3,500品目に新たな関税を導入する。エレクトロニクス部品は大半が無税となる。
    日本メキシコ経済委員会が日墨間の貿易・投資協定の可能性を検討していることを評価している。メキシコは世界の重要なパートナーとの間に自由貿易協定のネットワークを広げるという戦略を進めているが、現在の構想のなかで日本だけが欠けている。双方に利益をもたらす自由貿易協定の締結に向け、両国の政界・経済界でコンセンサスを形成していく必要がある。現在、通産省、外務省との間で作業を進めており、6月に次官級協議を開催する予定である。最初から自由貿易協定を目指すのではなく、第一段階として投資保護協定の締結から着手するのが有効であると考えている。


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