土地・住宅部会(部会長 田中順一郎氏)/3月16日
国土・住宅政策委員会の土地・住宅部会では、政府の都市計画法の抜本改正の動きをフォローしながらこれからの都市のあり方について議論している。第6回の部会では、経済協力開発機構(OECD)のジョセフ・コンビッツ都市課長から、これまでの海外諸都市に関する研究成果を踏まえて「国際競争力ある都市の条件」をテーマに話を聞き、意見交換を行なった。
経済成長と都市の発展は密接な関係にある。OECD加盟の先進諸国の半数以上の国民が都市住民になるといわれる21世紀の社会において、都市は経済発展や技術革新に対応して変化していくイニシアチブを持たねばならない。しかし都市の変革には莫大な資金が必要であり、公共セクターや民間セクターが単独でその費用を賄うことは不可能である。公共セクターと民間セクターが各々適切な役割を担いつつ、強力に連携することを通じて、変化に柔軟に対応できる都市こそが魅力ある都市であるといえる。
世界の諸都市を見ると、経済の変化に対応して、イギリスではロンドンが世界の金融センターを目指しており、マンチェスターやグラスゴーが地域の業務拠点として再生を遂げようとしている。フランスではパリが世界一の観光都市として君臨し、リヨンが地域核都市としてスイスや北イタリアなどの近隣大都市圏との連携を深めている。オーストラリアではシドニーが2000年オリンピック開催を契機にアジア太平洋のセンターを目指し、メルボルンは地域の産業、商業の拠点として再生しつつある。アメリカではニューヨークが国際金融都市として、またシアトルが航空・コンピュータの2大産業に特化した形で発展を遂げている。
これらの都市はいずれも共通した課題を抱えている。具体的な問題として、多くの都市で都心部のインフラ整備、メンテナンスが十分に行き届いておらず、郊外に比べて都心のコストが高いことが挙げられる。また、都市問題への国民の理解も浅く、交通と土地利用との調整、都市間の経済格差の調整について、同じ都市圏に属する自治体相互の連携に欠けている。日本にはないが、移民や少数民族の社会的統合をいかに図るかが課題となっている都市も多い。投資優遇税制があって柔軟性を欠くことが問題となっている。
こうした課題に対応するための世界の各都市の取組みとして、
多くの都市で、規制緩和、地方分権、民間との連携への動きが強まっている。もっとも都市問題については、レーガンやサッチャーによる行き過ぎた規制緩和路線の修正を求める声が強く、より計画的な都市政策や社会問題への配慮が求められている。その背景には、急激な郊外化の進展と熟練労働者の不足が都市の競争力を低下させていることが挙げられる。健全な都市づくり、車社会への依存からの脱却、スプロール化への対応措置を進めるイギリスや、ゴア副大統領を中心として都心部の再生を図るアメリカに見られるように、各都市では現在、郊外化に対する厳しい規制と都市中心部への投資の誘導を図るための措置、また衰退産業からの離職者の再教育などに熱心に取り組んでいる。もっとも政府が講じるべき都市政策、社会政策、投資誘導や競争力強化のための措置の内容には論争がある。
これからの都市政策の成否を握る10のチェックポイントは、その政策が