経団連くりっぷ No.99 (1999年4月8日)

WTOサービス自由化に関する懇談会/3月16日

米国サービス産業は、日欧産業界との連携を求める

−WTO次期サービス貿易自由化交渉に向けた米国産業界の取組み


米国サービス産業連盟(CSI)のバスティン事務局長より、2000年からのWTO次期サービス交渉に向けた戦略と今後の活動について聞き、意見交換を行なった。

  1. WTO次期サービス交渉に向けた戦略
    1. CSIは、昨年末、USTRに対し次期WTO交渉に関する要望書を提出した。この中で次期交渉で取り上げるべき重点分野として、流通、金融、医療、自由職業(会計士、弁護士等)、建設・エンジニアリング、電気通信、観光・旅行の8分野を上げ、基本的考えを示した。今後、各分野における国別の貿易障壁を明らかにする予定である。

    2. CSIが特に重視しているのは、

      1. 拠点設立の権利、
      2. 外資制限の撤廃・緩和、
      3. 内国民待遇の付与、
      4. サービスの越境取引の自由化、
      5. 市場指向・競争促進的な規制改革、
      などの確保である。

    3. このうち規制改革は、参入事業者数の制限、市場による価格決定の制限、外国企業に対する差別的取扱いなどを排し、公平な競争の土俵を確保することを目的とする。サービス貿易一般協定(GATS)には国内規制の規律に関する条項があり、これに基づく合意を期待している。また、新たな規制導入の際には意思決定プロセスが公開されるべきであり、米国ではそのための手続きが立法化されている。

    4. サービス提供において人の自由な移動も重要な要素の一つである。日本政府も技術者、経営者などキーパーソネルの移動の重要性を主張しており、日米で連携が可能な分野であると考える。

    5. 電子商取引については、既存のGATSルールを適用すべきである。電子商取引に関わる法的管轄権、プライバシーの保護といった複雑な問題をWTOで検討することは、電子商取引の発展の可能性を阻害するおそれがあるため不適当である。

    6. 次期交渉全体の枠組みについては、投資ルール策定などを含む包括的交渉を指向する欧州、日本政府の立場に反対である。市場アクセス交渉を中心とするサービス分野と、投資ルール策定のような政治的な交渉を関連付けることは、交渉全体を複雑化させる。3年以内に交渉を終了させるためにも、サービス、農業などの分野に限定したセクター別交渉とすべきである。

  2. 民間産業界の連携など
    1. CSIは、欧州サービス産業によって組織されたヨーロピアン・サービス・ネットワークと協力していく予定である。

    2. 本年11月末からの第3回WTO閣僚会議に向け、CSIは11月1日から、学界、官界、産業界による情報共有とネットワークづくりを目的としたサービスに関する世界会議を主催する。日本企業の積極的な参加を期待する。


くりっぷ No.99 目次日本語のホームページ