経団連くりっぷ No.99 (1999年4月8日)

産業技術委員会 知的財産問題部会(部会長 丸島儀一氏)/3月18日

著作権に関するWIPOでの議論と欧米での立法動向


デジタル化・ネットワーク化等の技術の進歩に応じて、WIPO(世界知的所有権機関)において著作権制度についての国際的議論が進んでいるとともに、欧米諸国における新たな立法の動きがあり、わが国における制度見直しに多大な影響を与えている。そこで、産業技術委員会知的財産問題部会(部会長:丸島儀一キヤノン専務取締役)では、著作権審議会専門委員の山本隆司弁護士から、標記テーマにつき説明を聞くとともに懇談した。

  1. WIPOにおける議論
  2. デジタル技術・ネットワーク技術の進展により、著作権制度も変遷を遂げつつある。従来、著作物は媒体によって権利内容が異なっていたが、コンピュータの出現以来、マルチメディア化が進み、単一の媒体にあらゆる種類の著作物が統合されるようになり、権利内容は統一化される方向にある。
    WIPOでは96年にインターネットの普及を前提とした送信権の設定やコピー・コントロールの迂回規制を内容とする著作権条約および著作隣接権条約が締結され、技術進歩への対応が進んでいる。その後も、創作性のないデータベースに対する保護のあり方、放送事業者の権利等について議論されている。データベースの法的保護については、EU指令によってすでに独自の権利を与えているEUと、不正競争防止の観点から法的解決を図ろうとする米国とに対応が分かれている。わが国においては議論はまだ深まっておらず、今後の検討が待たれる。

  3. 米国における立法動向
  4. 米国では情報通信技術の発展に対応したインフラ整備のために、著作権制度の見直しは必要不可欠であるという観点から、近年積極的な立法が行なわれている。98年には、デジタル・ミレニアム著作権法を制定し、WIPO著作権条約への対応を図るとともに、ネットワーク上の著作権侵害についてネットワークプロバイダーの免責を定めたほか、著作権者団体等の強い働きかけにより、著作権の保護機関をEU並みの著作権者の死後70年に延長する法律を制定した。

  5. EUにおける立法動向
  6. EUでは95年に情報化社会における著作権制度についてのグリーンペーパーが発表された。このグリーンペーパーでは、準拠法の問題のほか、頒布権、RAMへの一時的な電子的蓄積、公衆伝達権等についての考え方が示された。このグリーンペーパーに沿ったEUディレクティブ案が97年末に公表され、現在、EU議会で検討されている。

  7. 日本の対応
  8. わが国においても情報化社会が本格化するに従い、近年、ほぼ毎年著作権法改正が行なわれている。昨年末に著作権審議会において、コピー・コントロールの迂回規制、電子的権利管理情報の改竄規制、一般的譲渡権と一般的上映権の導入を提案する報告書がとりまとめられ、現在、これらを内容とする著作権法改正法案が準備されている。


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