経団連くりっぷ No.99 (1999年4月8日)

産業技術委員会大学問題ワーキング・グループ(主査 小野田 武氏)/3月11日

技術者教育認定制度のあり方について

−工学教育から技術者教育へ


経団連では、かねてより大学等の教育内容を、グローバル・スタンダードも視野に入れて、経済社会のニーズに応えたものにすべきと提言してきた。現在、「国際的に通用するエンジニア教育検討委員会」(委員長:吉川弘之 日本学術会議会長・日本工学教育協会会長)において、産業界が期待する国際的な技術系人材の育成のための教育という観点から、工学系大学の教育プログラムの評価基準や評価実施機関のあり方等、技術者教育認定制度の確立に向けた検討を進めている。そこで、同委員会の副委員長である大橋秀雄 工学院大学学長ら関係者より、その検討状況について説明を聞いた。

  1. 大橋 工学院大学教授説明概要
    1. わが国の大学の審査・評価・認定システムとしては、すでに大学設置・学校法人審議会による設置認可、大学基準協会の加盟審査・相互評価、および各大学の自己点検・自己評価等が存在するものの、いずれも大学・学部・学科等の教育機関としての評価を行なうものであり、現在、同委員会で検討しているような専門教育プログラムの内容とその目的達成度を評価・認定するシステムとはなっていない。そのために、例えば、技術者教育の質的同等性を相互に承認する国際協定であるワシントンアコードへの加盟ができない状況にある。

    2. 現在、われわれに求められているものは、プロフェッショナル(専門職)としての技術者の社会的認知と、技術者資格と技術者教育認定の国際整合性の2つである。そのためには、従来の工学教育からプロ意識を持った自立できる技術者の育成を目指した技術者教育への改革と、専門職資格の基本となる高等教育の国際整合性の確保が必要となる。そこで、それぞれの学協会が行なう認定作業のコンダクターとしての役割を果たすとともに、国際相互承認の対応窓口となる、技術者教育認定機関「日本技術者教育認定機構」を、産学官の支援の下、できるだけ早期に設立すべきである。

    3. 技術者教育認定がもたらす主なインパクトとしては、第1にプロ意識を持った自立できる技術者(の卵)の育成、第2に国際的に通用する技術者の育成、第3に工学教育の国際整合性を梃子とした、大学側の意識改革、第4に国際的に認知され整合性のある技術者資格の基盤がわが国でも整備されること、等が挙げられる。

  2. 小野田主査補足説明概要
  3. 現在、日本技術者教育認定機構設立準備委員会において、4年制理工系学部教育等における技術者教育プログラムを対象に、専門分野にかかわらず一般的に適用される共通基準案と、専門分野毎に適用される分野別基準案について、それぞれの学協会と協力して作成するとともに、本制度の事業を行なう「日本技術者教育認定機構」を早期に設立すべく、同機構の持つべき機能、組織のあり方等を検討しているところである。


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