経団連くりっぷ No.100 (1999年4月22日)

なびげーたー

通商政策に転機が来るか?

参与 太田 元


わが国は次期WTO交渉において積極的な役割を果たすことが期待されているが、二国間協定の本格的な活用も視野に入れる時期にきている。

  1. ガット体制の進展がわが国の経済発展の一翼を担ってきたことは疑いない。
    いままた世界の貿易投資制度の自由化の推進、透明性の向上、保護主義の抑止に向けたWTO交渉、同時に中国等の新規加盟交渉が本格化しようとしている。
    こうした背景から、貿易投資委員会、(委員長 北岡隆)と貿易部会(部会長 團野廣一)を中心に産業界としてWTO交渉への期待が何か、あわせてわが国通商政策の新たな課題についても検討を重ねている。

  2. WTO交渉でわが国産業界が特に期待を寄せるアジェンダとしてアンケートやヒアリングをベースに検討した結果は次の通りである。

    1. 鉱工業品の関税引き下げ
    2. アンチ・ダンピング措置の保護主義的発効の防止
    3. 電子商取引の取り扱いの明確化
    4. 知的財産権の保護の強化
    5. 国際投資ルールの整備
    6. サービス貿易の自由化
    7. 紛争処理手続きの強化

  3. わが国通商政策の新たな転機にもなり得るテーマとして、自由貿易協定その他の二国間協定(投資保護、年金等、相互承認等の協定や租税条約)の活用(見直しも含む)がある。すでに政府部内で特定の国との非公式な検討が進められており、経団連においても一部の二国間委員会の場で取りあげられている。
    これまでわが国は、多国間主義の立場から自由貿易協定、その他の二国間協定を活用してこなかった。しかし現実問題として、何らかの二国間・地域自由貿易協定に参加していない主要WTO加盟国は韓国と日本である。今後はWTO整合的な形で多角的貿易交渉の場では容易に実現しない自由化やルール作りを二国間、地域レベルで先取りし、彼我の企業が国境を超えたビジネスをより行ない易い環境にしていこうという考え方である。かかる取組みはWTO交渉等における交渉力の強化にも繋がるとの期待もある。

  4. この他、わが国の通商交渉体制の問題として、政府における省庁の枠を超えた協力体制の構築の必要性、産業界がこれまでルールづくりに対し受身であった反省から、官民の連携強化のための連絡協議会の設置を求める意見等も出ている。また、日本企業が外国で通商上の問題に直面した場合に、欧米のような貿易救済措置の申請制度が必要との声もある。これらは、わが国通商政策に新たな展開を期待するものである。
    貿易投資委員会では、これらの問題につき近々意見書をまとめる予定であり、会員各位の率直なご意見をお寄せいただければ幸いである。


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